2019年まで政府専用機として活躍したボーイング747-400型機が、人工衛星を打ち上げるための飛行機に姿を変えて、再び日本の空にお目見えする可能性が出てきた。小型人工衛星の打ち上げを手がける米ヴァージン・オービットが22年5月10日(現地時間)、米軍需大手のL3ハリス・テクノロジーから747-400型機2機を取得したと発表。その機体を紹介するツイートに、おなじみの塗装が残された旧政府専用機とみられる飛行機が写っていたためだ。
ヴァージン社と大分県は20年、「水平型宇宙港」として大分空港の活用を目指す合意を締結。かつての政府専用機が、大分空港を拠点に衛星の打ち上げを担う可能性もある。
747型機の下に搭載した衛星入りロケットを高度約10キロで切り離す
ヴァージン社の打ち上げは「水平式」と呼ばれる方式で、改修した747-400型機の下に小型衛星を載せたロケット「ランチャーワン」を搭載し、高度約10キロで切り離して打ち上げる。 ヴァージン社はすでに、英ヴァージン・アトランティック航空で運航していた747-400型機「コズミック・ガール」を改修して打ち上げ機として就航させている。同社の発表によると、これまでに商用ベースの打ち上げを3回行い、26個の衛星を軌道に乗せることに成功している。
今回のヴァージン社が発表した2機の追加取得は、「米国国家安全保障および同盟国の衛星打ち上げ需要の増大に対応する」ことが目標。その概要を
「L3ハリスは、新たに取得した機体のうち1機を、ヴァージン・オービット社の小型衛星打ち上げサービス用の追加空中発射台として使用するために改修し、2023年の引き渡しを予定している」 と説明している。ヴァージン社は5月11日(日本時間)、
「L3ハリス社と提携し、ボーイング747-400型機を2機確保した。これにより、国家安全保障や衛星打ち上げの需要に対応し続けることができる。お客様が選ぶどんな場所からも、ご希望のスケジュールで打ち上げ可能だ」
という文章とともに、発表文へのリンクをツイート。ツイートには3枚写真がついており、そのうち1枚に旧政府専用機とみられる機体が映っている。
「飛行機の墓場」で撮られた写真と特徴が一致
旧政府専用機は2機が1993年に導入された。日本航空(JAL)が整備を担ってきたが、JALでは2011年に747型機が退役。老朽化に加えて整備が難しくなったため、日本政府は19年に777-300ER型機に買い換えていた。防衛省は旧専用機を競争入札でリサイクル会社「エコネコル」(静岡県富士宮市)に約13億円で売却。同社は改めて海外に販売する方針を示していた。
世界中の飛行機の写真や登録情報が投稿されるウェブサイト「プレーンスポッターズ」によると、旧専用機は米国に売却され、「飛行機の墓場」のひとつとして知られるアリゾナ州のピナル・エアパークで20年2月に撮影したとされる写真が投稿されている。2機が並んで映っており、両機とも垂直尾翼の日の丸や、機体前方に描かれた「JAPAN 日本国」の文字は白く塗りつぶされている。そのうち1号機(N7474C)は、エンジンが取り外され、機体の前方には白いシートのようなものが貼り付けられている。この2点は、ヴァージン社のツイートで投稿された機体の写真と一致している。
かつて米航空宇宙局(NASA)は、ボーイング747型機の胴体の上にスペースシャトルを載せて輸送していた。2機あった輸送機のうち1機は、元々はJALの国内線で運航されていた機体だ。日本の整備水準の高さが、再就職先への道を開いている面もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
Our fleet is growing! We partnered w/@L3HarrisTech to secure two Boeing 747-400 airframes. This allows us to continue supporting national security and satellite launch demands. We can launch from any location our customer chooses, and on their schedule. https://t.co/bpDQ605R1t pic.twitter.com/gLC1pUzjBC
— Virgin Orbit (@VirginOrbit) May 10, 2022