中国のSNSで、米国映画「ラ・ラ・ランド」(2016年公開)が「NGワード」に指定されるという奇妙な現象が起きている。
映画はアカデミー賞で、11部門でノミネートされ、6部門で受賞。ロサンゼルスが舞台、女優の卵とジャズ演奏者を目指す男性のラブストーリーをミュージカルで表現している。決して中国政府を批判する内容ではなく、「NGワード」になった理由は不明だ。ただ、上海でロックダウン(都市封鎖)解除のメドが立たず住民の不満が高まる中、少しでも関連しそうな事柄を規制する狙いがありそうだ。
「shanghai」に「だます」の意味
中国のSNS「微博」(ウェイボー)では、ハッシュタグ付きで、「LaLaLand」と検索しようとしても、「関連法規や政策によって、このページは表示されません」の警告メッセージが表示される状態が続いている。中国政府が作品名をNGワードに設定していることを示す表示だ。
その理由ははっきりしないが、韓国・中央日報が5月8日付けの記事で指摘しているのが、せりふの内容だ。具体的には序盤の「It's not my fault I got shanghaied.」という部分。「shanghai」には動詞で「だます」という意味があり、ここでは「だまされたのは自分のせいではない」という意味だ。
ただ、この語源は上海と関係がある。19世紀に米国西海岸と中国の間で行っていた貿易で、米国ではハイリスクな太平洋航路の船員の募集が難しく、だますような形で上海航路の船員に動員するケースもあったことに由来している。中央日報では、この語源が上海を否定的に見る「侮辱」に映った、との見方を紹介している。
中国外務省の「失言」もNGワードに
そのほか、中国政府による失言がNGワードになったとみられる例もある。中国外務省の趙立堅副報道局長は21年12月の記者会見で、
「ここにいる皆さんを含め、海外の記者は疫病が流行っている間、中国本土で生活しながら、こっそりと楽しんだ」
と発言。上海でロックダウンが始まったのは3か月後の22年3月末。ネット上では当時の楽観的な発言が蒸し返され、政府に対する批判が相次いだ。この批判が影響したとみられ、「こっそりと楽しむ」を表す「偷著樂」という単語もNGワードに入っている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)