大手牛丼チェーン「吉野家」の採用担当から、外国籍なら就労ビザ取得が難しいなどとして、就職説明会の予約をキャンセルすると一方的なメールが来たと、ツイッターでその画像が投稿された。
投稿者は、自身は日本国籍のハーフだとしており、この内容に不快感を訴えている。吉野家は、メールを送った事実を認め、「いつもは国籍の確認をしていますが、今回は漏れてしまって申し訳ございませんでした」と謝罪した。
理由は「就労ビザの取得が大変難しく、入社できない可能性」
採用担当からだとするメールは、2022年5月3日にツイッターに投稿された。
株式会社吉野家の「説明会ご予約の件」とのタイトルで、5月1日付の送信となっていた。
メールでは、吉野家に関心を持ったことに感謝をつづったうえで、説明会に予約した件で連絡したとした。続いて、投稿者の予約について、次のような記述があった。
「外国籍の方の就労ビザの取得が大変難しく、ご縁があり内定となりました場合も、ご入社できない可能性がございます。
従いまして、大変申し訳ございませんが、今回のご予約はキャンセルとさせていただきますことをご了承ください」
最後に、投稿者が素晴らしい企業などと出会って、社会人として活躍する未来を社員一同が願っているとして、「何卒ご理解ご了承のほどよろしくお願いいたします」と結んであった。
このメールに対し、投稿者は、自身は日本で生まれ育った日本国籍のハーフだとして、説明会を一方的にキャンセルするのはどうなのかと不快感を露わにした。
投稿には、メールの画像も載っており、2万件以上リツイートされて拡散している。
吉野家ホールディングスの広報は6日、J-CASTニュースの取材に対し、今回のメールを説明会予約者に送ったことを認めてこう説明した。
厚労省「公正な採用選考の考え方に反している可能性」
「国籍については、いつもは確認を取っていますが、今回は、漏れてしまっていました。なぜ確認を取らなかったかの理由については、現時点では分かっていません。参加申込情報から外国籍と思われる方へは本来、先ず連絡をすべきところ、連絡の過程において不備がございました。誠に申し訳ございませんでした」
そもそも、外国人の雇用については、厚労省がサイト上などで、「国籍で差別しない公平な採用選考」を呼びかけている。厚労省によると、外国籍であることのみを理由に、企業などが採用面接などの応募を拒否することは、公正な採用選考の観点から適切ではない。
とすると、外国籍なら就労ビザ取得が難しいなどとして、就職説明会の予約をキャンセルしたことは、外国人差別に当たらないのだろうか。厚労省の外国人雇用対策課では5月6日、取材に対し、こう話した。
「どういう事情で書かれたのか確認しないと何とも言えませんが、もし事実ならば、公正な採用選考の考え方に反している可能性があります。学生などから相談があれば、こちらでは各都道府県の労働局が対応することになります」
公正な採用選考に反しないかについて、吉野家ホールディングスの広報は、次のように答えた。
「適切かどうかは、厚労省が決めることになります」
「就職説明会の予約をキャンセルしたことが厚労省の指針から見て適切かどうかは、厚労省が決めることになります。私どもが判断できる立場ではありませんので、回答は差し控えさせていただきます」
外国籍の場合は予約をキャンセルする理由については、こう説明した。
「吉野家では『ダイバーシティ』をキーワードとし、組織の活性化を目的に外国籍社員の積極的な登用を続けており、国籍を問わず、将来的な幹部候補として中長期的な教育に基づいた雇用を主としています。従って、吉野家のこの方針に最も沿うと考える技術・人文知識・国際業務によるビザの取得を前提とすることを採用対象の条件としております。
但し、技術・人文知識・国際業務によるビザの取得は非常に困難であり、内定取り消しをせざるを得なくなったことが一定程度ございました。ビザの取得をできず内定を取り消された方の心象を慮るあまり、外国籍の方は新卒の会社説明会のご応募をいただいても参加をやむなくお断りしておりました」
就労ビザが取れなかった場合は、不法就労に当たってしまうため、内定取り消しは仕方なかったと述べた。これまでに取り消した人数など詳細については、答えられないという。
ただ、説明会への参加を断っていたことについて、「吉野家の外国籍の方の採用に関して説明が不足しておりました」と認め、「今後は応募者に対してわかりやすい採用活動に努めてまいります」としている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)