衆院憲法審査会で野党筆頭幹事を務める立憲民主党の奥野総一郎衆院議員が2022年5月3日の憲法記念日に都内で開かれた護憲派の集会で、「ロシアよりも許せないのが今の与党」で、「どさくさ紛れに改憲を試みよう、国民をだまそうとしている」などと主張し、後に撤回に追い込まれた。
発言は同日夜放送の「プライムニュース」(BSフジ)で追及され、奥野氏は「ちょっと言い過ぎた」「ちょっと場所が場所で、私もエキサイトして...」などと釈明。「環境的バイアスがかかっていた」という指摘には「まあ、そういうことです」と応じ、護憲派の聴衆に合わせた結果として出た発言だったとの見方を示した。
「許せない度合いが『ロシアより許せない』というのは、ちょっと言い過ぎた」
奥野氏の発言は、護憲派の「憲法大集会」の中で出た。ロシアによるウクライナ侵攻を批判した上で、次のように述べた。
「ロシアを断じて許すわけにはいきません。そして、そのロシアよりも許せないのが、今の与党であります。どさくさ紛れにですよ、ウクライナ問題をダシにして改憲に突き進もうという、その姿勢を、私は許すわけにはいかないと思うんです。まさにどさくさ紛れに改憲を試みよう、国民をだまそうとしているんですよ」
さらに、野党筆頭幹事としての立場を念頭に
「私は今、憲法審査会をあずかっていますけれども、今の憲法審査会は、各党がいかに改憲に熱意があるか、それを示すPRの場になってしまっています」
とも述べた。
奥野氏は、番組で司会の反町理氏から真意を説明するように求められ、「すみません、最初のところは、ちょっと私も言い過ぎてると思うんですが...」。発言要旨を書いたフリップを手にした反町氏から「1行目(「ロシアより許せないのは今の与党だ」)は撤回?」と確認されると、
「撤回ですね、これは申し訳ない。新藤さん(編注:与党筆頭幹事の自民党・新藤義孝衆院議員。番組にも同席していた)に申し訳ない。許せないんだけれども、許せない度合いが『ロシアより許せない』というのは、ちょっと言い過ぎたと思います」
と話した。
それ以降の部分については、
「僕はね、改憲は決して反対じゃないんです。意外かと思われるかもしれない。新藤さんもご存じです。ただ、やっぱり冷静な議論が必要だと思うんです。『国民をだまそう』という部分も、これもちょっと言い過ぎている感はあるんですが...」
などと説明。与党側が主張する緊急事態条項をめぐる議論は「一見もっともらしいんですよ」とする一方で次のように話し、集会の発言の意図を釈明した。
「でもやっぱりきちんと、『なぜそうなのか』『どこが今の憲法に足りないのか』というところを、私はしっかりそれを憲法審査会の中で議論していかなきゃいけない、その上でなお、どこか足らざるところがあれば、それは合意の上で進んでいくのだと思います。でもまだそれに至っていない、各党が宣伝合戦になっているのではないか、よろしくないのではないか、という趣旨で言っていること。ちょっと場所が場所で、私もエキサイトして...」
維新・馬場氏「奥野さんがそういう方だったというのは、ショックを受けましたね~」
ここで反町氏が「護憲の皆さんが多い集会だったんですよね?」。発言の背景について
「そうするとその場において、やはり、立憲を代表するお立場としては、多少そちらの角度が強くなってしまうという、『環境的バイアス』がかかっていた、こういう理解でよろしいですか?」
とただし、奥野氏は「まあ、そういうことです」と応じた。
「ウクライナ問題をダシにして」の部分についても、反町氏は
「実際に今、これから与党にうかがいますけれども、新藤さんや馬場さん(編注:日本維新の会・馬場伸幸共同代表。新藤氏と同様にスタジオに同席していた)が(進めている)憲法改正に向けた憲法論議は、どさくさまぎれにウクライナ問題をダシにしている、こういう理解でお感じになっているんですね?」
と追及。奥野氏は
「私はそう感じていますが、ただ議論はしっかり今回も応じていますし、ですからもう少し時間をかけてゆっくりと議論をしていきたいと思います」
と答えた。
「国民をだまそうとしている」という部分についても、撤回する考えを示した。憲法審査会が「PRの場になってしまっている」という発言は撤回せず、その意図を改めて説明した。
「もう少し、例えば緊急集会とか、少しずつ掘り下げて議論していかないと、各党が自分の思いを述べるに今はとどまっていますから、1個1個論点を整理して、きちんと掘り下げて議論していくことは必要だと思います」
新藤氏は集会での奥野氏の発言について「私としては、それはそのまま全く受け取ってません」。支持者向けのポジショントークに過ぎないとの見方を示した。
馬場氏は
「奥野さんがそういう方だったというのは、ショックを受けましたね~」
と不快感を隠さなかった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)