20歳の時に事故で右腕と両足を失った山田千紘さん(30)は、就職活動で直面した障害者雇用の現実に「ガッカリしてしまった」と話す。求人票に書かれた給与額は、低い会社で13万円程度、正社員採用をする会社もほとんどなかったという。
諦めかけながらも奮起し、再就職を果たした山田さん。だが入社後も「成長を期待されていないのかな」と違和感を抱き、転職へ――。何があったのか。山田さんが障害者雇用をめぐる実体験を語った。
【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)
「手足が3本ない体で、この会社で何ができるだろう」
事故の前はケーブルテレビの営業職で働いていました。手足を失い、リハビリなどを終え、社会復帰を考えた時、「この体で営業職に戻るのは難しい。これからはデスクワークの事務職に就くだろう」と思いました。今から8年前のことです。
でも、両手があった頃から、僕はパソコンをほとんど使ったことがありませんでした。片手で使えるようにならないといけない。そのステップとして職業訓練校に通いました。
再就職にあたり、会社は人をどう判断するか改めて考えました。最初は履歴書。でも、書けることはほとんどありません。高学歴でもなく、高校は卒業したけど、大学は中退。前職も、事故があったから2か月程度で辞めています。
その中で就職活動をするのは難しいと思いました。「手足が3本ない体で、この会社で何ができるだろう」。自分がもし面接官だと考えると想像しづらかったです。
その時、履歴書の資格欄に書けることを増やさないといけないと思いました。片腕でもこれだけできると資格で示せれば、面接官にどんなことができるか聞かれた時、一発である程度理解してもらえます。車の免許から始まり、職業訓練校でパソコンのスキルを身につけ、簿記の資格も取りました。
WordやExcel の技能を評価する「CS検定」も取りました。CS検定には10分間タイピングという項目があります。両手ですごく速い人だと1200文字くらい、一般的には500文字くらい打てるでしょうか。僕も練習して、片手で450文字くらい打てるようになりました。
キーボードにはFとJのキーにホームポジションの印がありますが、僕はその間のHキーにシールを貼っていました。画面を見ながら、片手でブラインドタッチできるようにひたすら練習しました。新聞記事をWordに打つとか、暇さえあれば練習。徐々に手が覚えていきました。
スキルをつけたり資格を取ったりしてレベルアップしていくと、履歴書に書ける内容が増えるのと同時に、自信を持てます。やってきたことに自信が持てさえすれば、面接でも伝わるはずだと思いました。