高知競輪場で2022年4月21日に開催されたレースが、発走直後の衝突事故により約3秒で中止となった。ネット上では「なかなか無いレースの中止例」などと話題を呼んでいる。詳しい経緯を聞いた。
「なかなか無いレースの中止例だな...」
注目を集めているのは、21日に開催された「第11回松村憲・松村信定土佐の親子鷹杯・報知新聞創刊150周年記念 第20回スポーツ報知杯争奪戦(FI)」の第1レース(A級一般、先頭固定1500メートル)での出来事だ。
当日の様子は高知競輪の公式YouTubeチャンネルでもライブ配信されている。
7人の選手が号砲とともに発走機から飛び出す。外枠の7番・藤原悠斗選手がペダルを一漕ぎすると、出遅れた6番の選手を追い越し、内側を走る5番・高橋佑輔選手へ急速に近づく。そのまま横から突っ込むように衝突。
体を弾かれた高橋選手は転倒、落車してしまう。レース中断の号砲が鳴るまで約3秒間だった。
一連の映像は同日、ツイッターでも拡散され、「なんしてんのまじで!笑」「なかなか無いレースの中止例だな...」などと驚くような反応が上がっている。
高知競輪場の競技副委員長は22日、J-CASTニュースの取材に対して「原因は雨」だと答えた。レース前に雨が降り出し、コースが濡れた状態だったという。また当時の状況を、
「ペダルを踏み込む際に、藤原選手が滑ったというか車輪が空回りした。バランスを崩して内側によろけて、5番選手と接触した」
と説明し、「多分スリップしたのだと思う」とも述べる。
発走線から25メートルラインまでに問題が生じた場合は再発走となる。当該レースも一旦は再発走の場内アナウンスがされたものの、最終的には「5番選手の欠場に伴い、公正な競技の実施が困難であると判断されます」と中止になった。
「故意にやったわけではない」
この間には何があったのか。事故後の検査で藤原選手と高橋選手の自転車に問題は無かった。ただ、高橋選手が医師の診察を受けていたといい、
「ひじを強打していました。落車した現場でも痛がっていたんですけども...管理棟の方に帰ってもやっぱり痛いと。結果、出走不可能ということで欠場になりました」
と副委員長はいう。レースを中止した経緯は次のように説明する。
「そのまま5番車を欠車の状態で、発走するということも出来るんですけれど、5番選手がいなくなったことによって色々とお客さんの、本来予想していた展開にはならないのかなという部分で取りやめ、全返還(払い戻し)という措置をとりました」
次のレース開始までには「発走機の前で落車していますので、点検等々は当然しています」。2レースの選手紹介は、時間の都合により一礼で終わらせたとする。
今回の事故に関してのペナルティは、
「故意にやったわけではなく、雨等々による事が原因であって、本人はやむを得ない状況だったので、罰則などは何もない」
と伝える。「万が一故意であったとしても、発走が完了していませんので、競走がはじまってない状況なので何もお咎めはないです」とも明かす。
雨天のレース時に同様の出来事は散見されるのか尋ねたところ、
「滅多にはないんですけどもね...。時々、全国的には本当まれに、何件かは見たことはありますが、そんなにしょっちゅうあるわけではないです」
と述べた。副委員長は今後について審判に、「特に雨の日、今回滑ったという所を滑らないように対処するよう指示した」とする。