ロート製薬は新型コロナワクチンを接種した社員を解雇する――。SNSで、こんなフェイクニュースが数千以上も拡散されている。
情報に尾ひれがついて広まり、ワクチン接種に反対する人の間で注目されている。同社は取材に困惑気味に否定し、対応を検討していると明かす。
「一人もワクチンを打ってません」
発端とみられるのは、「全従業員にワクチン接種したら解雇を伝えた。ロート製薬の会長山田邦雄氏」と題した2022年2月のブログ記事だ。運営者は新型コロナに関する投稿を頻繁にしており、そのほか手相や栄養療法、ロシアのウクライナ侵攻について触れている。
記事では、ロート製薬の山田邦雄会長が記したとする文章を掲載していた。
「私の会社も14社ありますが一人もワクチンを打ってませんワクチン接種したら解雇します従業員の安全を守るのはトップとして当たり前のことだからです」
情報源は不明だが、ユーチューブの動画が添付されていた。自然療法士を名乗る人物が、山田会長の以下の持論に賛同する内容だ。
山田会長は日経新聞の1月12日付ウェブ記事「EU、頻繁な追加接種に懸念 免疫低下の恐れも」に対し、「これは合理的に考えてその通りの懸念だと思う(中略)あくまでも重症化を防ぎ、自己の自然免疫で克服する医療ノウハウの開発にこそ重点を置くべきだ」などとコメント欄で指摘していた。
しかし、このコメントにもユーチューブの動画にも、山田会長が「全従業員にワクチン接種したら解雇を伝えた」とする内容は見当たらない。
「郎報です」「皆に読んでもらいたい」
ブログ記事は4月17日ごろから、ツイッターで「郎報です」「皆に読んでもらいたい」などの書き込みとともに転載され始めた。
いわゆる反ワクチン的な言説を繰り返しているアカウントが紹介すると、20日現在で4600リツイート、1万5000いいねと注目を集めた。
ロート製薬広報・CSV推進部は20日、J-CASTニュースの取材に、問い合わせなどで事態を把握したとする。ブログ記事に掲載された山田会長の発言は「事実ではない」と否定し、同社では職域接種もしている。
ブログは現在削除されたものの、広く拡散しているツイートはいまだ閲覧できる状態だ。今後の対応については「社内で検討中です」と話した。