「コロナは風邪」発言理由に舞台を大量降板 当事者が続々暴露も...団体が否定「都合が良すぎる」

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   演劇のプロデュース・制作などを手がける団体Aznet Produceは2022年4月18日、舞台「エンリ帝国戦記~叙事詩オモイカネ~」のキャスト13人が降板すると発表した。団内で新型コロナウイルスの陽性者が複数出ているという。

   降板した複数のキャストが同日、ツイッターに経緯を投稿しており、「コロナが風邪だと思えるキャストだけ残ってください」という団体からの言葉が決断の大きな理由になったとしている。一方、団体側はこうした発言があったことを「事実と違う」と否定した。

  • 「Aznet Produce」公式サイトより
    「Aznet Produce」公式サイトより
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コロナ感染の経緯を公表

   Aznet Produceは、舞台のプロデュースを立花和紗氏が、作・演出を神話作家の輪島貴史氏が手掛ける団体だ。「エンリ帝国戦記~叙事詩オモイカネ~」は4月20日~24日にかけ、全10公演を予定していた。

   初日の2日前となった18日、同団体は立花氏の名前で「Aznet Produce劇場公演『エンリ帝国戦記~叙事詩オモイカネ~』上演スケジュールの変更及び出演キャストの変更についてのお知らせです」と詳しい経緯を記した文書をツイッターに投稿した。

   変更理由については「新型コロナウイルスの影響」としている。「叙事詩オモイカネ編」「毒王の儀編」の2作品が上演される予定だった作品を「毒王の儀編」のみとして、土日に限り公演を行うという。

   上演方法についても、有観客・完全無観客の配信のみで行うのかは協議中であるとして、結論が出次第、報告する予定だとした。この変更に伴い予約は配信予約も含め全てキャンセルとし、公演の詳細が決まり次第、再度予約を受け付ける。

   大幅な変更が出た理由については、経緯を以下のように伝えている。

「5日(火)より稽古を開始。
 10日(日)の朝にキャストの1名から体調不良の連絡を頂き、日曜日の稽古は一旦中止しリモートに切り替え全員PCR検査を受けて頂きました。
 その際にキャスト2名が陽性となり(無症状)15日(金)まで自宅会議、ZOOMにて稽古に参加。(医師の判断を経て16日(土)より現場復帰)
 また、演出の輪島にも咳の症状が見られましたが、PCR検査の結果は陰性でした。(念の為輪島は16日(土)までリモートで参加。17日(日)より現場復帰)
 11日(月)12日(火)は全員ZOOMにてリモート稽古。
 13日(水)に通し稽古を行うため、PCR検査で陰性だったメンバーは稽古場にて稽古を行う。
 14日(木)の朝に追加でキャスト1名より体調不良の連絡を受ける。潜伏期間中だとPCR検査は陰性になってしまうため時間をおいての発症だと思われます。→15日(金)にコロナ陽性を確認
 15日(金)の稽古中、キャスト1名が咳が止まらず喘息の発作のような症状で呼吸がままならない状態であったため救急車を予備病院に搬送。元々持病で喘息を持っていた上で、稽古中叫ぶシーンがあったり、稽古場が埃っぽいということも要因として考えられます。PCR検査を受け、現在結果を待っている状態。
 17日(日)お昼頃キャスト1名から微熱、吐き気などの症状で病院へ行くという報告を受ける。医師の診断は風邪と胃炎とのことでしたが、念の為PCR検査を受け、現在結果を待っている状態」

「この状況でも公演をやるという人間だけで公演を行いたいと思っています」

   こうした状況を受け、「世の中の風潮であれば陽性者が出た時点で公演は中止になるものではありますが、何とか公演を行えないかと対策をしつつ公演の準備を進めておりました」というものの「公演を行いたいというのは団体のエゴであり、キャストに強要はできない」と判断し、キャストに対し出演の意思を確認したという。

「いつ、誰が陽性になってもおかしくないというこの状況なので、無理強いは出来ません。この状況でも公演をやるという人間だけで公演を行いたいと思っています。各キャストの所属事務所様や、当公演の次に控えている現場やレギュラーで入られている仕事にご迷惑をかけたくないので、降板したい方は降板してほしい」

   降板については、「こちらからのお願いであり、各キャスト様には何の非もない」としている。これにより、13人のキャストが出演を取りやめたという。残ったキャストは、輪島氏と立花を含めて10人。

   立花氏は発表で、一連の判断について以下のように述べている。

「私や、作演出の輪島の思いと致しましては、コロナの陽性者が出たら公演を中止しなければいけないという現在の演劇界の風潮、情勢に何としても抗いたい、1公演だけでも、配信公演だけでも良いので、何かしら作品を上演したい という思いが強くありました」
「陽性者が出た段階で稽古を中止しなかったことで批判の声が上がるかもしれないということは重々承知しておりますが、それでも、最後まで公演が上演出来るよう戦っていきたいと思います。また、この議事録をこのように公開することにより、他の団体様への情報提供になれば良いなと思っております」

   降板せず、出演を決めたキャストについては「今回の件で降板せず、一緒にコロナと戦うと決意してくれたキャスト達をどうぞ、応援して頂けますと幸いです」としている。

降板キャスト「団体様の考えとは相違がある」

   一方、出演予定だったが降板した複数のキャストが、団体の上記ツイートを引用しながら、それぞれの思いを投稿している。来栖梨紗さんは降板理由について「体調不良者が続出する中、4月17日の『コロナが風邪だと思えるキャストだけ残ってください』という言葉を受けてこれ以上参加し続けることが出来ないと判断した」とした。「出演を楽しみにしていてくださったお客様には大変申し訳ございません」とお詫びしている。

   来栖さんは「何があってもやり切ることを信念とする私には続投する方が、これまでの自分の信念と照らし合わせると自然でした」とするも「ですが、冒頭の言葉を受け、そう思えない中続けることの方が不誠実だと判断しこのような決断となりました」としている。

   梓真なるさんもツイッターに「『コロナを風邪と思えるキャストだけ残ってください』とお話を受け、私を含む13名のキャストが熟考して決断した結果です」と投稿。悔しさがありながら「舞台は私1人で作るものではなく、このままではこの舞台だけでなく今後私とかかわる方々にもご迷惑をおかけしてしまうと思い、沢山沢山悩んだ結果、降板という選択に至りました」と胸の内を明かしている。

   根倉綾珠さんもツイッターで、ファンに「本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」としながらも、「私を含む降板者13名は、本当に本当に最後まで悩み向き合いましたが、『コロナは風邪であると思えるキャストのみ残ってください』という言葉を受けて考えるものがあり、この決断にいたりました」と降板理由を説明。観客や友達、家族、同じ舞台に立つ役者などに「不安を与えることだけはしたくありませんでした」としている。

   宮本朋実さんはツイッターで「もし陽性者が出たとしても、すぐに中止という判断はせず、改めて【皆の健康・安全を確認した上で】稽古を再開、臨機応変に対応し公演を行う、その思想に賛同し出演依頼をお受けしました」と明かす。だが「体調不良者が続出する中、4月17日に『コロナが風邪だと思えるキャストだけ残ってください』という言葉と共に、出演するかどうかの判断を促されました」として降板理由をつづっている。

   宮本さんは「私自身も昨年コロナに感染し、軽症とはいえ辛い経験をしております」との経験から「感染症を決して甘く見ずにしっかりと向き合い、できる限りの対策をして、キャスト・スタッフの健康に気をつけつつ、何よりもお客様に安心して観に来て頂けるよう配慮する。その上で、キャストが数人出演できなくなったとしても臨機応変に対応し、公演を行う。これが私が役者として舞台に立つうえでのスタンスです」として、「『コロナは風邪』と思いコロナと戦うという団体様の考えとは相違があると判断した為、この度降板という決断をさせて頂きました」としている。

「コロナは風邪だ」について「そのような発言はしておりません」

   Aznet Produceはその後、立花氏の名前で18日夜、ツイッターに「降板キャストの発言に事実と相違がある点について」と題した文書を公開。「降板したキャストが主催の『コロナは風邪だ』という言葉で降板したと揃って言っておりますが 団体側としてはそのような発言はしておりませんし、残ってくれたキャストもそのような発言はなかったと認識しています。類似した表現はあったかもしれませんが、あくまでも例えの話です」と、降板キャストらの投稿内容を否定した。

   団体側が伝えたかったことは「これ以上は団体のエゴであり皆さんを巻き込むことが出来ない」「降板したことは一切責めない」「降板した際もそれは団体からお願いしたことを公言する」の3つだとし、「コロナを風邪だと思っているのならそもそも降板して下さいなんて対応をまずしません」と指摘されている発言を重ねて否定した。

   作演出の輪島氏は、顔合わせの時から「例え陽性者が出たとしても、何かしらの対策をしながら公演は行っていくつもりです。最悪、日曜に配信公演だけでも出来ればいい。それくらいの思いでやっています」と説明しているという。降板するかどうかをキャストに決めてもらう際も「強要はしたくないし、この場(稽古場内)にいるとやらなければいけないみたいな圧力になってしまうから、考える時間を設けさせて下さい」と1時間ほど設定し、「個々で結論を出してくれれば大丈夫です。今すぐ結論が出ないなら返事は明日でも構わないです」と伝えたという。

   すると、今回降板したキャストらは「外でみんなで相談した上で、全員で降板しますと言いに来られました」「結託し、更には稽古場に残っていた人間をLINE で呼び出し話し合いをしています」という。団体側は「その話し合いの間で事実がねじ曲がり、 主催がそのように言ったからだという刷り込みがされた可能性もあります」と推測。「お互いにフェアで居たいという思いから個々で判断して下さいと時間を設けたのに、降板されたキャストが口々に『コロナは風邪』と示し合わせたようにTwitterに書くのはちょっと降板した側にとって都合が良すぎるのではないでしょうか」とした。

   立花氏は「(コロナを)風邪だと思っていないから、色んな所に迷惑をかけたくないので辞退して下さいとお願いをしたのです」と改めて強調。各種対策も取っていることをこう伝えている。

「決して命を軽んじているわけではありませんし、コロナを軽く見ているわけではありません。現状のオミクロン株に対するコロナ対策、潜伏期間、PCR検査、他団体のコロナ発生時の対応など常に情報収集も常に行っております。その上で、現在コロナを5類にするかどうかという議論も政治上行われていたり、諸外国のコロナのあり方を見て陽性者が出ても公演を継続するにはどうすれば良いのか、ということを考えていただけです」

   立花氏は「こちらの言い分としては事実と違うことを発信されている」と繰り返す一方、「再三申し上げますがこちらは降板したキャストを責める気は全くありません。むしろ、いろんな思いがある中で降板という決断を下してくださって有難うございますと思っています。帰り際の役者にも有難う御座いましたと声をかけています」と感謝も伝えた。

   その上で「これ以上は言った言わないの水掛け論になってしまいますので論争するつもりもありませんが 事実と違う発言が独り歩きしているこの状況は余りにも残ってくれたキャストが可愛そうです、公演をやると残ってくれたキャストに対して責めるような発言をすることは辞めて下さい」と呼びかけ。「全員、コロナに対してきちんと理解をした上で自分の意志で残ってくれたキャストです。この状況でも公演をやりたいと残ってくれたキャストの思いは守らせて下さい」としている。

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