ウクライナのゼレンスキー大統領が2022年4月11日に韓国の国会で行ったオンライン演説で、出席した国会議員の数が少なかったことが批判を呼んでいる。
韓国に300人いる国会議員のうち、出席したのは約50~60人。日米と違ってスタンディングオベーションも起きず、下を向いたり、携帯電話を見たりしながら演説を聞く国会議員もいた。こういった状況を、ロシアの大学教員は「アジアがウクライナにあまり関心がないことの表れ」だとツイート。無関心がロシア側の主張に利用される形になっている。
朝鮮戦争からの復興引き合いに「今、私たちは同じことを望んでいる」
ゼレンスキー氏が外国議会で演説するのは韓国が24番目で、アジアでは日本に次いで2番目。ゼレンスキー氏は演説で、ウクライナ南東部の都市、マリウポリの犠牲者が「数万人」だとした上で、次のように訴えた。
「これは20世紀にも見られたことだ。そして、あなた方はそれを記憶している。国土を守ることがいかなることかを知っている。1950年代に、あなた方の自由を破壊しようとする者たちから攻撃されたことを覚えているはずだ」
朝鮮半島が焦土と化した朝鮮戦争を念頭においた発言で、「あなた方は耐え、世界はあなた方を助けた。今、私たちは同じことを望んでいる」とも。国際社会の支援で韓国が復興を果たしたことを引き合いに、ウクライナに対する支援を求めた。求めた支援の内容は「防空システム、航空機、戦車などの装甲車、大砲システム、弾薬」。直接的な軍事的な支援だ。
椅子の背にもたれかかったり、うつむいたり、携帯電話を操作したり...
日本や米国での演説同様、相手国の背景に合わせて内容が練られていたが、聴衆の反応は大きく異なっていた。
朝鮮日報によると、韓国の国会議員が演説に向けた関心の度合いは「他国より著しく低かった」。他国では演説を放映した部屋には多くの人が集まったのに対して、韓国では「あちこちが空席」だった。各国ではスタンディングオベーションだったが、韓国では「席に座って拍手した」という。
同紙のコラム「記者手帳」によると、記者からは「なぜこんなに出席者が少ないのか」と驚きの声もあがった。椅子の背にもたれかかったり、うつむいたり、携帯電話を操作していた議員もいたという。大統領選では「ウクライナの痛みを共有する」と主張した野党議員がいたといい、コラムでは「この日は、そのような熱意を見いだすのは困難だった」と嘆いた。
ロシア大学教員「アジアがウクライナにあまり関心がないことの表れだ。日本は例外だ」
ハンギョレ新聞は、社説に「ゼレンスキーの訴え、『空の国会』が見せた恥ずかしい外交」の見出しを掲げ、「国際秩序の変化に無関心な韓国政治の現住所を見せているようだった」と指摘している。ゼレンスキー氏が求める直接的な軍事的支援は「韓国政府には『難題』」だとする一方で、国会議員の意欲の低さを批判した。
「武器支援問題とは別に、韓国の政治家たちはゼレンスキー大統領の訴えを聞いて、できることを真剣に悩むことが優先でなければならなかった。『世界10位先進国』『国際社会での役割強化』を強調していた韓国政治家はどこにいるのか」
こういった状況は、ロシア側に見透かされている面もありそうだ。ロシア・ウラジオストクにある極東連邦大学のアルチョム・ルーキン氏は、空席が目立つ写真付きで
「韓国の国会議員が出席者の記録を更新した。見てください、この空席を」
と訴えるツイートを引用しながら
「アジアがウクライナにあまり関心がないことの表れだ。日本は例外だ」
と指摘した。
このやり取りは中央日報が報じており、改めて国会議員を批判している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)