プロボクシングの世界ミドル級王座統一戦が2022年4月9日にさいたまスーパーアリーナで行われる。WBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(帝拳、36)がIBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン、39)と拳を交える。
世界ヘビー級統一王者マイク・タイソン(米国)が来日してリングに上がった88年、90年を超えるともいわれる国内最大規模のビッグマッチ。最後に手を挙げるのは村田か、それともゴロフキンか。J-CASTニュース編集部は協栄ジムの金平桂一郎会長(56)に勝負の行方を占ってもらった。
全階級を通じて「最強」の称号をほしいままに
村田とゴロフキンはアマチュア出身でアマ時代は世界のトップ選手として国際大会で活躍した。村田は12年ロンドン五輪のミドル級で金メダルを獲得しており、ゴロフキンは03年世界選手権ミドル級で優勝し、04年アテネ五輪ではミドル級で銀メダルを獲得している。
両者のプロキャリアを比較してみると、ゴロフキンは43戦41勝(36KO)1敗1分を誇り、村田の18戦16勝(13KO)2敗を大きく上回る。
06年にプロデビューしたゴロフキンに対し、村田は大学卒業後もアマチュアのリングに上がり続け13年に27歳でプロキャリアをスタートさせたこともあり、このようにプロでのキャリアに開きが出たが、世界王座を獲得してからのゴロフキンの戦績はすさまじいものがある。
10年8月にWBA世界ミドル級暫定王座決定戦に勝利し暫定王座を獲得(のちに正規王者昇格)。その後、他団体との王座統一戦を含めて17連続KOで世界王座の防衛に成功し、18年9月にサウル・アルバレス(メキシコ)に敗れるまでWBA王座19度、WBC王座8度、IBF王座4度の防衛を果たした。
全階級を通じて「最強」の称号をほしいままにしたゴロフキン。金平会長はゴロフキンの強さは力強く多彩な左ジャブにあると指摘する。豪快な倒しっぷりから強打のイメージが強いが、金平会長は「アマチュア経験が豊富で技術的に非常にうまい選手」と評する。
「ゴロフキン選手のジャブをいかにして機能させないか」
「村田選手はゴロフキン選手のジャブをいかにして機能させないかだと思います。ジャブに右クロスを合わせるのか。それともクラシカルにジャブを右で払うのか。ゴロフキンのジャブは一辺倒ではなくバリエーションがある。相手にとって嫌なタイミングでポンポンと来る。踏み込もうとしたらジャブで叩いてくるし、引こうとしたらジャブで追いかけてくる。それに気を取られたら鉈のような左フックが飛んできますから」
これに加えて脅威となるのが多彩なコンビネーションだ。なかでも左ボディーからのコンビネーションは強烈で、左右どちらもフィニッシュブローとなる。
ゴロフキンの弱点は見つけにくいという金平会長は、あえて不安点を挙げるとしたら年齢からくる体力の衰えとアウエーでのプレッシャーだと指摘した。
「ゴロフキン選手はスタミナ面で若干不安があるのではないでしょうか。これに加えて敵地での戦いです。ゴロフキン選手は敵地で戦った2度のアルバレス戦(引き分け、0-2判定負け)で嫌な思いをしているので、それが頭にあると思います。当然、村田選手への応援も重圧になるでしょう」
「最強」王者を迎え撃つ村田はどこに勝機を見出すのか。金平会長は村田のストロングポイントを「豊富なトレーニングに裏打ちされたスタミナと日本人離れした強靭なフィジカル」だと指摘する。
「仮にダウンを取られたとしても粘り強く泥臭く」
「村田選手はおそらくがっちり守ってプレッシャーをかけていくボクシングをするだろうと予想します。ゴロフキンの強打に対してそれをやり続けることが出来たらそこが勝機となるでしょう。とにかくしっかりガードを固めてボディーコンタクトをして削り合いながら左ボディー、あるいは右ストレートがカギになると思います」
また、金平会長は村田が離れて戦うイメージがわかないとして試合は接近戦になると予想し、戦いが長引くほどゴロフキンにも焦るが出てくるとだろうとの見解を示した。
「村田選手は若干効くパンチを受けることもあるかと思うが慌てないことが大事。仮にダウンを取られたとしても粘り強く泥臭く戦うイメージでいってほしい。なるべくガードを固めて。そうすれば10ラウンドあたりに勝機が見えてくると思います」
そして今回のビッグマッチが日本のボクシング界にとってどのような意義を持つかについて言及。
金平会長は「コロナ禍のなかでボクシング興行が潰れていく中で今回の興行は凄い意義がある。日本ボクシング界ここにありと。あと新たな試みとしての脱地上波(編注:試合はAmazonの独占配信)。もしかしたら地上波放送がないことで一気にマイナー化してしまう恐れもあるが、やるからには是非うまくいってほしい」と期待を込めた。