東京メトロの有楽町線・南北線延伸がもたらすメリットは? ターゲットは再開発進む豊洲・品川

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   東京メトロは2022年3月28日に、有楽町線の豊洲~住吉間と南北線の白金高輪~品川間の延伸事業について国土交通省からの事業認可を受けたことを発表した。いずれも2030年代半ばの開業を目指す。

   新規延伸区間は副都心線の開業(2008年)以来の東京の地下鉄新線になる。延伸の背景と効果を探っていく。

  • 有楽町線の17000系電車
    有楽町線の17000系電車
  • 延伸区間の概要
    延伸区間の概要
  • 有楽町線の17000系電車
  • 延伸区間の概要

江東・墨田を地下鉄で縦断できる

   有楽町線の延伸区間は豊洲から分岐して東西線東陽町駅を経由し、半蔵門線住吉駅までの4.8キロメートルで、途中に東陽町を含め3つの駅を設ける計画。再開発で人口と駅利用人員が急増している豊洲と東陽町・住吉・錦糸町・押上が鉄道で繋がることで江東区を鉄道で縦断でき、東京東部の交通改善が見込まれる。

「東京都では東部で錦糸町・亀戸エリアと臨海部を副都心に位置付けていて、豊洲と住吉がつながることで両エリアの活性化にも寄与できます。江東区を縦断する鉄道にはかつて東京都電がありましたが廃止されて以来無かったもので、地元の悲願でもありましたが豊洲や押上の再開発にも後押しされてここまできたと思います。東西線とも乗り換えられますので、同線の混雑緩和も狙いです」

   J-CASTニュースの取材にこう分析するのは、鉄道ライターで都市交通に詳しい枝久保達也さん。東京メトロは東西線の混雑率を木場~門前仲町間でピーク1時間当たり20%軽減する効果を見込む。

   またスカイツリーの地元の押上、半蔵門線と総武線が交差する錦糸町、同じく半蔵門線が都営新宿線と交差する住吉の各駅からも豊洲への移動時間が短縮できる。豊洲~住吉の所要時間は9分を見込んでおり、錦糸町・押上から15分前後で豊洲に移動できるようになる。ゆりかもめの始発駅で有明・お台場エリアへも行きやすい豊洲のターミナル機能がさらに強化されそうだ。

   枝久保さんによれば、有楽町線の住吉方面への延伸計画は50年前にさかのぼる。1972年の運輸省都市交通審議会第15号答申で、現在の有楽町線の原型(8号線)の中に豊洲から押上を経て亀有に至る路線が整備路線に挙がっていた。有楽町線が和光市~新木場で全通後、住吉~押上間は半蔵門線の延伸計画に組み込まれて渋谷~押上間の同線の一部として開業、押上から先は東武線に直通している。

「東京の鉄道はラッシュ対策で都心と郊外を結ぶ放射路線の整備が先行していましたが、それらを連絡する環状線が整備されることで、混雑の緩和や都心からやや離れたエリア間の交通の改善になります。有楽町線の延伸部も押上から豊洲、東西線沿線から新木場へ、といった東京東部の移動が便利になる効果を見込めます」(枝久保さん)

住吉駅の構造は半蔵門線直通への準備か

   運行形態はどんなものが予想されるか。実は半蔵門線住吉駅と有楽町線豊洲駅には既に延伸を想定した設備がある。豊洲駅は和光市方面と新木場方面のホームの間に使われていない線路を設けた2面4線構造で、使われていない真ん中2線は仮ホームを設けて歩行可能にしている。

   前出の経緯から半蔵門線の住吉~押上間はもともと有楽町線の分岐線として計画された。住吉駅の半蔵門線ホームは上下が分かれた2層構造で、列車が発着する本線の反対側に柵で仕切られた線路がある。現在は日中の車両留置に使われているが、住吉駅押上側で本線から分かれたこの線路は、そのまま南側に延伸して有楽町線豊洲駅までつながる構造を想定しているという。豊洲駅の中線から住吉駅半蔵門線ホームに乗り入れ、さらに押上方面に直通できることで、延伸効果はより大きくなる。

   「江東区ではデータイムは豊洲~住吉間の折り返し運転を行い、ラッシュ時に有楽町線池袋まで直通するダイヤで効果を試算しています。ただ単純な折り返し運転にしてしまうと上下でホームが分かれている住吉駅の乗り換えがわかりにくくなるので、押上方面への直通を前提にダイヤを組む可能性もあります」と枝久保さんは話す。

   延伸部から押上方面への直通が実現すれば押上・錦糸町・豊洲が一本の鉄道で直結されることになり、南北の人の動きも活発になりそうだ。

メトロが品川に初めて乗り入れる

   南北線の延伸区間は白金高輪~品川間の2.5キロで途中駅はない。こちらの狙いは東京メトロ初の品川乗り入れによる東京西部との移動ルート開拓にあるようだ。「品川は今後、高輪口側でも再開発が始まります。品川が始発駅になるリニア中央新幹線の開業も見据えて、メトロの特に西側の沿線からのアクセスを便利にしたい意図があるようです」(枝久保さん)

   この延伸計画が俎上にのったのは2016年の国交省の交通審議会第198号答申で、「都心部・品川地下鉄構想の新設」として「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークプロジェクト」の一つに位置付けられた。

   都営浅草線から京急品川駅への直通列車を除けば地下鉄が乗り入れていない品川に南北線が乗り入れると、六本木・永田町・赤坂エリアから乗り換えなしで品川へアクセスできる。山手線の六大ターミナル(新宿・渋谷・池袋・上野・東京・品川)の中で品川にだけ乗り入れていなかった東京メトロにとって、南北線延伸は自社ネットワークを強化できるメリットもある。

   南北線は白金高輪で都営三田線と合流して目黒に向かい、東急目黒線に直通している。現状は白金高輪で約半数の列車が赤羽岩淵方面に折り返しているが、「白金高輪駅の折り返し線をそのまま品川方面に延長できる構造になっています」(枝久保さん)とのことで、これを品川方面に延長することは可能なようだ。三田線からの列車も乗り入れ、三田線沿線からの品川直通も実現する可能性がある。

   有楽町線は豊洲、南北線は品川と、再開発で経済力が増す街をターゲットにした新線建設で、東京の鉄道ネットワークはより密でニーズを満たすものになっていきそうだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)

姉妹サイト