「今も帰れない」双葉町を観光で再生したい 「関係持ち続けたい」避難者のつながり原動力に

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「双葉町をどう残すか、こだわりがあります」

   山根さんは、東京生まれ。大学卒業後に映像制作会社に就職したが、震災後の2012年、当時埼玉県加須市の避難先で運営されていた双葉町役場を訪問したのをきっかけに、町との縁が生まれた。翌13年、双葉町復興支援員として、地域コミュニティーの支援に携わるようになった。16年からは一般社団法人で、今度は復興支援員をマネジメントする立場に。同年に結婚した夫人は、双葉町出身だ。19年に独立し、F-ATRAsを設立した。

   「ウォーキングツアー」は新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた5回中4回が中止となった。一方で「オンラインツアー」を続けている。現場で実体験はできないが、遠方や海外在住者でも簡単にツアーに参加できる利点がある。英語のオンラインツアーを実施すると、「事故後の町はどうなったのか」と興味を持つ人が参加した。

   ツアー以外の企画も実現し、双葉町ファンを増やそうと努める。ただ町の再生の主役は、住民ではないだろうか。復興庁が公表している、原発事故による避難者らの住民意向調査。最新の2021年12月7日付の数字を見ると、回答した双葉町1494世帯で、帰還の意向について「戻りたいと考えている(将来的な希望も含む)」は11.3%。「戻らないと決めている」は60.2%だ。「戻りたい」の数値が2020年8月の前回調査より0.5ポイント上昇しているが、それでも「戻らないと決めている」を大きく下回る。

   山根さんも、この結果を知っている、そのうえで、こう語った。「『戻らないと決めている』と答えた人の6割が、双葉町との関係を持ち続けたいと考えているのです」。

   これまで山根さんは、双葉町の多くの住民と話を重ねた。確かに町からは離れて暮らしているが、友人や同じ地域の知り合い同士の付き合いは、今も保たれていると感じる。避難先ごとに小さなコミュニティーがいくつも存在し、祭りや盆踊りをはじめイベントを通じてお互いのつながりは維持され続けているのだ。こうしたコミュニケーションが具体的な行動や形となって、双葉町に訪問客を呼び寄せる原動力にならないか――。

   こんな案がある。町の伝統行事「双葉ダルマ市」。住民がダルマに絵付けをして出店販売をする。山根さんが町民の女性とダルマ市の話をした際、「オンラインで絵付け教室ができるよ」と提案があった。「絵付けキット」を作って町を訪れる観光客に配り、避難中の町民がオンラインで絵付けの方法を教えながらつくってもらう。ユニークな企画だが、「ふるさとのために、避難先から貢献したい」という町民の気持ちが表れている。

「双葉町をどう残すか、こだわりがあります」

   住民の帰還だけが、全てではない。町民同士、山根さんのように町外から支援に来た人、そして訪問客が交流機会を増やすことで、多様な可能性が出てくるはずだ。「コロナ後」には観光需要が復活するだろう。山根さんのチャレンジは、続く。(この連載おわり)

(J-CASTニュース 荻 仁)

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