閉館していた軍艦利根資料館(広島県江田島市)のもとに、無断で持ち出されていた書籍が匿名で返却された。資料館は2022年3月29日、心当たりがあれば連絡するよう、ツイッターで呼び掛けた。正式な返却手続きを行わなければ書籍を処分するという。
「暫くは当館で預かる形と致します」
軍艦利根資料館は、重巡洋艦「利根」が着底した能美島に位置する。利根にあったものや乗員の服、装具などを展示している。書籍コーナーでは、当時の様子を書き記した乗組員達の手記、利根や重巡洋艦・筑摩に関する書籍などを展示していた。
2021年11月25日、「海軍生活放談」などの複数の書籍が館外に持ち出されたことを受けて、閉館を余儀なくされた。
資料館はボランティア2人で管理されている。仮に書籍が返却されても、これまでのように性善説に基づいて、自由に資料の閲覧ができる体制を維持するのは難しいという。ボランティアの1人・岸雅基さんは当時、J-CASTニュースの取材に対し、ボランティア活動の限界などを感じたと述べた。
「管理側として本音を言えば再開したいのですが、今の体制ではとても難しいと思います」
資料館は29日、持ち出された書籍が返却されたとツイッターで明かした。
「無断で持ち出された書籍について、戻って来ておりますが、手続きを行った上で返却された訳ではありませんので、暫くは当館で預かる形と致します」
「当方は一切受けとるつもりはございません」
ツイートに添付された書面では、次のように説明している。
21年12月初旬、「本返却」と書かれた差出人不明の段ボール箱が、資料館の入口の前に放置されていた。資料館はこのような形では受け入れられないとして、江田島警察署に段ボールを拾得物として届けた。
警察署での預かり期限を過ぎたため22年3月11日、資料館は段ボールを引き取った。
「暫くは預かりますが、当館をはじめ地域や来館者の方々に多大なご迷惑をかけていることに対しての反省や、事の重大さの短くかつ身勝手な態度には憤りを感じており、正式に返却手続きを行わない以上、当方は一切受けとるつもりはございません」
資料館は、「心当たりのある方は、連絡先を来館記帳用紙に記入し、備え付けの箱に入れてください。後日此方から連絡致します」と呼びかけた。無断で持ち出された書籍は担当者が自費で購入したものだとして、名乗り出なければ段ボールに入っていたものはすべて処分する予定だとしている。
無断で持ち出された書籍について、戻って来ておりますが、手続きを行った上で返却された訳ではありませんので、暫くは当館で預かる形と致します。 pic.twitter.com/IgLDHxaf51
— 軍艦利根資料館【閉館中】 (@tone_museum) March 29, 2022