顔認証システムなどを使って犯罪者予備軍をあぶり出すなどとした立正大学データサイエンス学部のPRサイトがツイッター上で物議を醸し、非公開となったことが分かった。
サイトの非公開について、同大の広報課は、「SNS上のご意見を受けて対応をした」と取材に答え、「意見については今後検証し、本学の広報活動に活かしたい」としている。
顔認証システムなどを使い、事件を起こしそうな対象を特定
2021年4月に開設されたデータサイエンス学部をPRするこのサイトでは、グリム童話にもある「赤ずきん」を元に、「データサイエンティスト赤ずきん」の物語をつづった。
そこでは、女の子の赤ずきんが、「最近は悪い事件が増えている」などと母親に言われ、どんなふうに気を付けるか考えるという話で始まる。赤ずきんはまず、森のいたるところに顔認証システムと監視カメラを設置し、犯罪者に多い動きや表情などをしている動物がいないか調べた。
そして、悪い事件を起こしそうなオオカミ1匹を特定し、犯罪が起きやすい日や狙われやすい場所をデータから分析した。その結果、今度の日曜日の21時ごろ、赤ずきんのおばあさんの家が危ないと分かったとして、赤ずきんは、そのときにおばあさんの身代わりになってベッドで待ち伏せした。すると、監視カメラで何度も見かけたオオカミが、ドアをノックして家の中に入ってきた。
オオカミは、赤ずきんのふりをして話しかけ、赤ずきんはすきを見て、逮捕すると叫んだ。その声を合図に、屈強なクマたちが窓から現れ、オオカミを取り押さえる。その功績で、赤ずきんは、村長から森の保安官に任命されるというストーリーだ。
赤ずきんなどのイラストでその様子を描き、ストーリーを紹介するユーチューブ動画も投稿した。最後に、「その後、防犯に役立つデータを活用して、治安のいい森づくりにも貢献。世界で一番平和な森となりました」などと紹介している。
このPRサイトは、2022年3月24日ごろからツイッター上で話題になり、28日には、まとめサイトも取り上げるなどの騒ぎになった。
「広告の役割を終え、年度末を機に切替を予定していた」
その内容について、研究者らからも疑問や批判が出て、「犯罪者みたいな表情をしただけで『現行犯逮捕』って」「データを使ってできることとやってよいことは別の話」「ある日突然犯罪者予備軍として捕まる未来が見える」といった意見が寄せられている。
このPRサイトは、ツイッター上などで騒ぎになって、3月28日中に閲覧できなくなった。また、ユーチューブ上の動画も非公開となった。
非公開の理由について、立正大学の広報課は29日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
「当該ページは広告としての役割を終え、年度末を機に切替を予定しておりましたが、SNS上のご意見中に、所属学生、教員に言及されているものも出てまいりましたため、繰り上げて対応し、昨日YouTube上で非公開とさせていただきました」
サイトに疑問や批判も出ていることについては、こう回答した。
「ご質問いただきましたものを中心にTwitter等で議論されている内容の一部は確認しております。本学から、一つ一つのご意見に対して、否定・回答などはいたしませんが、いただきましたご意見については今後検証し、本学の広報活動に活かしていきたいと考えております」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)