金融庁がパワーポイントなどの形式で発表した「高校生のための金融リテラシー講座」が、ツイッターでオススメだと紹介され反響を呼んでいる。
2022年4月から高校の必修科目である家庭科に「資産形成」の内容が盛り込まれることや、18歳に成年年齢が引き下げられることに合わせたものだ。金融庁の総合政策課に、講座の狙いなどを聞いた。
海外株式への投資なら、20年後に4倍になる試算もあるが...
この講座は、3月17日に金融庁のサイト上で内容が発表された。そして、24日になって、ツイッター上で学びになると紹介され、この投稿は、22万件以上も「いいね」がついているほか、「大人も勉強になりますね」「大人にも学んで欲しい内容です」といった声が寄せられた。
内容を見ると、パワーポイント形式で114ページあり、「家計管理とライフプランニング」から始まって7章まである。
まず人生でかかるお金として、「教育」「住宅」「老後」の3大費用を挙げ、そのための準備として、貯蓄の重要性を説いた。消費して残ったお金を貯めるのではなく、まず毎月貯めるお金を決めてその残りで消費しないと貯蓄は増えないとした。
ただ、ゼロ金利時代では、インフレになれば貯蓄が目減りするなどのデメリットもあるとして、お金を増やす「資産形成」の重要性も説いた。
それが第4章「『貯める・増やす』~資産形成」だ。その「参考編」では、より突っ込んだ内容を書いている。
資産形成に使う金融商品には、安全性、収益性、流動性から選ぶとし、収益性が最も高い株式は、一番安全性が低いとした。つまりハイリスクハイリターンだ。100万円を運用するとして資産シミュレーターで計算し、20年の投資期間では、預金はほとんど増えなかったが、国内債券は約115万円、海外株式は4倍の約402万円になるシナリオも示した。海外株式が高いのは、利子に利子がつく複利の効果もあるとしたが、利回りが悪い場合は元本割れのリスクがあるとも指摘した。
そして、リスクを軽減するためにできることとして、「キーワードは、『長期』『積立』『分散』投資。そして、『非課税制度』です」「長期・積立・分散投資を非課税制度で行う事です」とアドバイスした。
「自助努力してほしいと言っているわけではない」
そのケースとして、1985年以降に国内外の株式や債券に積立・分散投資した場合を計算すると、保有期間が20年のときは、2~8%の間で安定的なリターンとなり、100万円が178万円~326万円にまで増えた。一方、期間が5年のときは、81万円~183万円と元本割れのリスクもあった。
講座では、「5年という比較的短い投資サイクルだと、いつ始めたかによってリターンが大きくバラついているのがわかります」「20年だと景気が良い時も悪い時も通り越して複利の効果で資産が増えていくので、結果的に元本割れの可能性が下がると考えられます」としている。
低金利になった2000年から20年間投資した場合も、日本の株式と債券に半分ずつ積立・分散すると約57%資産が増えたといい、日本・先進国・新興国の株式と債券を6分の1ずつにするとほぼ2倍の約96%も増えたという。ただ、「これはあくまで過去の実績ですので、このとおりに投資して同じ利益が保証されているわけではないので、誤解しないでください」とはしている。
そして、もう一つ重要なのが非課税制度だとし、投資の分配金や売却益には通常約20%の税金がかかるため、「つみたてNISA」「iDeCo」といった制度の利用も呼びかけた。
金融庁の総合政策課は3月25日、J-CASTニュースの取材に対し、この講座を発表した理由をこう説明した。
「高校の家庭科に資産形成が盛り込まれることになり、先生から『体験がないのでどのように教えればいいか分からない』との声が寄せられました。パワーポイントのノートに教え方のサンプルを入れましたので、授業の参考資料として自由に活用してほしいと考えています」
家庭科への盛り込みについて、ネット上では、年金や社会保険が目減りする中で、今後は自助努力してほしいという国の意向の表れではないかとの憶測も出ている。この点については、次のように話した。
「それは文部科学省の審議会で議論して決めたことですが、この講座では、自助努力してほしいと言っているわけではありません。年金の問題はありますが、ライフプランが多様化し、生き方を主体的に考えるには、様々なお金の使い方をしなければならなくなっています。そんな中で、資産形成の重要性が増していると言いたかったわけです」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)