国民民主党が参院でも予算案に賛成するなど与党接近が鮮明になる中、野党第1党の立憲民主党が対応に苦慮している。立憲は2022年夏の参院選1人区で野党候補が競合しないように候補者調整を呼びかけており、現時点で国民民主党も呼びかけの対象だ。
一方で、西村智奈美幹事長は3月22日の定例会見で、国民民主が国会で質問する時間は、野党に割り当てられた時間から配分すべきではないとの考えを示している。事実上の与党に対して候補者調整を申し入れる形にもなりかねず、その整合性が問われる事態になっている。
立憲内部では「質疑時間を与党の中で割り振りしてもらうべきじゃないか」の声
西村氏の発言は、
「国民民主党を与党扱いするのか野党扱いするのかということについて、立憲民主党内からは『質疑時間を与党の中で割り振りしてもらうべきじゃないか』というような意見もある」
という質問に答える中で出た。
西村氏は、
「(国民が)政府の考え方を是としているということで、私達はやはり判断せざるを得ないというふうに思う。質問時間の割り振りについても、政府に対する、政府の予算案を100%是認した政党としての向き合い方になっていくというふうに思う」
と話し、質問時間の配分については国民民主を与党としてみなすべきだとの考えを示した。
衆院予算委を例にとると、国会の質問時間は、野党によるチェック機能重視する観点から、長い間「与党2:野党8」の割合で配分されてきた。ただ、17年の衆院選大勝をきっかけに自民党が「与党5:野党5」を要求。野党が反対した結果、「与党3:野党7」で折り合った。野党に割り当てられた時間をどのように各野党に割り振るかは、厳密にルールが決まっているわけではなく、野党第1党が出す野党筆頭理事の裁量によるところが大きい。例えば21年2月の衆院予算委では、国民民主よりも議席が多い日本維新の会の方が、国民民主よりも少ない時間しか割り当てられなかったとして維新が反発する場面もあった。維新の足立康史衆院議員は、野党筆頭理事を務めていた立憲の辻元清美副代表(当時)に矛先を向け、2月5日の予算委で
「おかしな時間配分、誰がやったか。辻元さんですよ。私は、辻元さんが何か私に恨みがあるのかなと思っていたんです」
などと非難した。
候補者調整は「丁寧に話し合いをしていく」
西村氏は一方で、候補者調整については国民民主への働きかけを続けたい考えだ。国民民主を与党に近い存在とみなしていることとの整合性について問われると、次のように説明した。
「自公政権の議席を一つでも減らしていくということが、私は緊張感のある政治を取り戻していくために、どうしても必要だというふうに思う。私の責任としては、候補者調整というのは引き続き追求していかなければいけない。この参院選は、そういう意味でも非常に重要。野党第1党として私たちがきちんと責任を果たしていくためにも、そこは丁寧に話し合いをしていく。そのことは必要だと思うのでこれからも追求していく」
ただ、西村氏が言う「野党第1党」としての責任が果たせるかは現時点では不透明だ。立憲の泉健太代表は3月18日、共産党、社民党、れいわ新選組の3党と相次いで党首会談し、1人区での候補者調整に合意。国民民主は会談に応じなかった。
国民民主の玉木雄一郎代表は3月22日の定例会見で、この経緯について問われると、1人区で立憲・国民民主が競合しているのは宮崎県しかないことを挙げ、
「すでに選対レベルで協議が行われていると承知しているので、協議が『持ちかけられたら受ける、受けない』のレベルではなくて、すでに始まっているという認識」
「衆院選の時から方針は明確だが、共産党さんと選挙協力、選挙区調整をする、我々は意図は持っていない」
などと話した。
立憲に対して国民民主との対決姿勢を鮮明にするように求める声も出始めた。毎日新聞は3月23日付朝刊の社説で「自民に近づく国民民主 もはや野党とは言えない」の見出しを掲げ、
「昨年の衆院選は一部選挙区で他の野党と候補者調整を行い、野党陣営の一角だった。半年もたたずに与党に接近するのは、投票した有権者への裏切りではないか」
などと国民民主を非難。参院選の候補者調整については
「野党が候補者を一本化し、自民と1対1の構図を作ることが重要だ。国民民主の姿勢が変わらないのであれば、立憲は関係を見直すべきだろう」
と主張した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)