「折り鶴を送るのは迷惑になるとのご指摘をたくさんいただきました」
ウクライナの平和を願い、在日ウクライナ大使館(東京都港区)に「千羽鶴」を届けようと考えるも、断念した男性がいる。決断の裏にはどんな思いがあったのか。J-CASTニュースが2022年3月15日、胸の内を聞いた。
「この蛮行を許してはいけない」岐阜市内で抗議活動
ウクライナ大使館に折り鶴を送る予定だったのは、岐阜県揖斐川町の保井円(59)さん。同町にある「大和神社」の神主で、神社境内の古民家を改装した宿「宿屋揖斐川」のオーナーでもある
フランスに23年の在住経験があり、ロシア人の知人もいるという保井さん。今回のウクライナ侵攻を受け、22年3月1日に自身のFacebookで反戦への思いを伝えた。
「この蛮行を許してはいけないという意思表示をすること。SNSで発信する、寄付をする(寄付先は慎重に選ぶ必要がありますが)、署名をする、デモに参加する...。どんな形でもいいので、とにかく許さないということを表明しなければなりません」
この呼びかけに、地元の保井さんの知人らが「自分も意思表示をしたい」と賛同。集まったメンバー10人が、3月5日に岐阜市内で戦争への抗議活動を行った。「戦争反対」「NO WAR」と書かれたプラカードを作り、青と黄色の「ウクライナカラー」の折り紙で鶴を折った。
このときメンバーが折った鶴は50~60羽ほど。保井さんは「今後も活動を継続し、1000羽出来上がったタイミングでウクライナ大使館に送ろうか、という話をしていました」と振り返る。活動の様子は地元紙・岐阜新聞が6日に朝刊とWeb版で報じ、保井さんらが鶴を大使館に送る予定であることも伝えられた。
「折り鶴なんて意味がない」風潮に思ったことは
報道後、保井さんのFacebookに寄せられたのは「千羽鶴を送るのは迷惑ではないか」との指摘だった。
千羽鶴は「平和のシンボル」として、長く日本で親しまれてきた。災害からの復興を願い、自治体に寄贈されることもある。しかし、東日本大震災(11年)など大規模な自然災害が多発する近年では、被災地に贈られる千羽鶴が、必要物資の供給を妨げる「ありがた迷惑なもの」として認知されるケースが目立っていた。
「記事が出た後、いろいろな方から反応をいただきました。フランスにいた時間が長く、東日本大震災のときも日本にいなかったので、(被災地で)そういう問題が起こっていたことは知りませんでした」(保井さん)
寄せられた指摘を「なるほど、そういうものなんだ」と受け止めた保井さん。メンバーと考えた末、千羽鶴の大使館への寄贈を断念した。
一方で、寄せられた反応からは「折り鶴なんて意味がない」というニュアンスも感じ取ったと話す保井さん。次のような言葉を投げかけた。
「例えば、ご家族の中でウクライナの問題を考えながら鶴を折ることは、『自分がウクライナにいたらどうする?』『お父さんが戦いに行くとなったらどうする?』と想像を巡らせるきっかけになると思います。折り鶴を受け取る外国の方からすれば、『日本の人たちがこんなものを折ってくれたんだ!』と励みになる。日本の文化が持っている大切なことが、必要以上に蔑まれているなと感じます」
今後、千羽鶴が完成した際は「宿屋揖斐川」に飾る予定だ。「宿に来るお客さんと一緒に、ウクライナの問題を考えるきっかけにしたいと思います」