新型コロナウイルスの水際対策緩和に伴って政府が外国人留学生に10万円の支給を決めたとNHKがウェブ版記事で報じたことに対し、文科省が抗議して記事が修正されたことが分かった。
文科省は記事について、「水際対策の緩和に伴い入国した外国人留学生のみを対象とした給付を行うという事実はない」と否定している。NHKは、修正にあたって公式サイトなどで説明や謝罪はしなかったが、「誤解を招かないように、適切な表現に努めています」と取材に説明した。
水際対策とは関係なく、留学生も含めた学生らが対象だった
「水際対策緩和 入国も困窮の外国人留学生に10万円支給決定 政府」。NHKの記事は、2022年3月10日にこんなタイトルでウェブ版に配信された。
冒頭では、「水際対策の緩和に伴って入国した経済的に苦しい状況にある外国人留学生を支援しようと、政府は、1人当たり10万円を支給することを決めました」とまず伝えた。
そして、政府は、水際対策緩和で1日から留学生らの入国を認めたのを受け、3月末までに入国した留学生のうち、コロナの影響でアルバイトに就けないなど経済的に苦しい人に支給するとした。
一方で、感染の長期化などで厳しい状況となった大学生などについても、1人当たり10万円を支給する緊急給付金の申請を受け付け、各大学などの審査を経て3月中に給付するとしていた。
この記事を受けて、ツイッター上などでは、見出しや冒頭の記述などから、「留学生だけに新たな支給を行うのか」との誤解が広まった。一方、同省の制度を調べて、NHKの報道を問題視する声も出ていた。
その後、文科省の公式サイトでは、「3月10日に掲載されたNHKの記事について」と題して、学生・留学生課から「報道内容」と「事実関係」を比較する形で説明があった。
それによると、留学生のみ対象としたことはなく、大学などがコロナの影響で困窮していると判断して推薦した学生らに支給する既存の緊急給付金を3月中に再度大学などから受け付けるものだという。
水際対策とは関係なく、留学生も含めた学生らが対象だとした。
「誤解を招いた表現だったため修正した」
NHKの記事はその後、修正が加えられ、「経済的困窮の外国人留学生や日本の学生に10万円支給へ 政府」と見出しも変更された。
冒頭の文についても、「水際対策の緩和に伴って入国した外国人留学生や日本人の学生のうち経済的に苦しい状況にある人」と支給対象が改められた。それ以外は、表現が部分的に少し変えられた程度だった。
文科省の学生・留学生課は3月14日、J-CASTニュースの取材に対し、記事に抗議したことを認めたうえで、次のように説明した。
「NHKの記者から取材を受け、『事実関係』に書いた話をしましたが、記事では、ニュアンスが若干違っていました。完全に誤報ではありませんが、読み方によっては誤解を生むと11日に記者に連絡しました。NHKでは、そのことを踏まえて検討していただき、同じ日のうちに記事を修正してもらいました。NHKからは、誤解を招いた表現だったため修正したと連絡がありました」
記事修正にあたって、NHKから公式サイトなどで説明や謝罪はなかったほか、留学生と日本の学生の新しい別の2制度のように読み取られる恐れもなお残る。
この点について、学生・留学生課は、「記事による誤解を解くため、文科省のサイトで11日に『事実関係』の説明をしていますので、こちらではなくNHKが対応を決める話だと思います」と話した。
なぜ留学生だけに新しい制度ができると受け取られるような記事を書いてしまったのかなどについて、NHKの広報局に取材したが、同局は14日夜、次のようなコメントだけした。
「NHKのニュースにつきましては、誤解を招かないようにするため、適切な表現に努めています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)