2022年3月12日のJRグループダイヤ改正で、JR西日本の奈良線から103系電車が引退した。
これで京都府・奈良県からも103系は撤退し、残存線区は兵庫県と福岡県、佐賀県に残るのみに。かつては在来線最多の3447両を数え、国鉄の通勤型電車の代表格になった形式は100両足らずが残るだけだ。
奈良・京都からひっそり撤退
改正前日の3月11日をもってJR奈良線(京都~木津・奈良)から103系は撤退し、京都府と奈良県での定期運用を終えた。事前にJRからプレスリリースなどでの告知はなく、ひっそりとした引退になった。ここの103系は吹田総合車両所奈良支所に在籍し、かつては大和路線・大阪環状線・おおさか東線でも運用に就いていたが、奈良線を最後に奈良地区の定期運用から撤退した。
3月12日以降に103系の定期運用がある路線はJR西日本の播但線(姫路~寺前間)・加古川線'(全線)・和田岬線(全線)とJR九州の筑肥線(筑前前原~唐津間)だけとなった。JR西日本の路線はすべて兵庫県内にあり、網干総合車両所本所と明石支所に合計40両の103系が残っている。JR九州では3両編成5本の合計15両が在籍する。
103系は国鉄時代の1963年から合計3447両が生産され、国鉄の在来線車両の中で最多両数を記録、三大都市圏に加えて仙台・岡山・広島・福岡地区にも在籍した。1980年代から2000年代初頭にかけては大都市でありふれた存在で、国鉄の通勤電車の代表格でもあった。
現存する103系の特徴は
どんな路線と車両に103系が残っているか。
和田岬線は沿線の工場地帯の職員輸送が目的のため平日は朝夕の運転のみ、休日ダイヤでは上下2往復のみの運転で、スカイブルーの6両編成1本が残っている。スカイブルーは京浜東北線・京葉線・阪和線でも採用されたカラーで最も原型に近いスタイルを保つが、1本だけの存在だ。
播但線の103系は播但線オリジナルカラーのえんじ色で、2両編成でワンマン化改造を受けている。客用窓や客室が大幅にリニューアルされ、フロントガラスのピラーもなくなっているが103系のスタイルをとどめている。一方加古川線用の編成は中間車に運転台を取り付けたため、前面上部にヘッドライトがあり貫通扉はないといった原型103系の特徴はあまりない。
JR九州の筑肥線103系は、関東や関西で活躍したタイプと異なり、福岡市地下鉄への乗り入れを想定して増備された。地下鉄乗り入れに備えて前面に貫通扉が付き、JR九州発足後は赤とシルバーのオリジナルカラーに塗り替えられている。既に地下鉄乗り入れからは撤退し、筑前前原~唐津間だけの運用になっている。
大幅な改造やバリエーションの違いから、播但線の車両は3500番台、加古川線は3550番台、筑肥線は1500番台を名乗る。
具体的な置き換え計画はないが
JR西日本・JR九州とも残る103系を置き換えるという旨の発表などはしていない。JR西日本では新快速用の225系の追加投入や、岡山・和歌山エリアでの新車導入を優先して進めるが、だからといって当面安泰とはいえない。というのもこの3月12日改正で関西各線でも減便が行われ、車両運用に余裕が出ているためだ。
テレワークの普及で朝夕ラッシュのJR京都・神戸線、学研都市線、JR宝塚線でも減便が行われ、207系・321系を使う普通列車の本数減と区間短縮がなされた。207系は和田岬線の103系の代走に入ることがあり、同線の103系はアナウンスもないままいつ置き換えられてもおかしくない状況だ。
一方播但線・加古川線・唐津線については当面動きは無さそうだ。2両や3両という短い編成であるため既存車両で置き換える場合でも編成替えが必要になること、それに加えて両社とも115系や415系といった老朽車両をほかに抱えていることを考えると、編成替えが不要な他の幹線エリア(山陽本線や鹿児島本線)のサービス向上を優先する可能性がある。
ただし、どの線区でも両数自体は少ないために置き換えが決まればあっという間に103系は引退してしまいかねない。いずれも運転本数は少なく、大都市の通勤電車という103系のイメージからはやや遠いが稼働する姿が健在なうちに記録しておきたいところだ。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)