金融制裁で楽観視はできない
ロシア国内の政策金利は20%とそれ以前から2倍強になった。各種制裁の結果、インフレ率は20%以上になるかもしれない。こうした動きは、ロシア国内での厭戦ムードを高める方向になるだろう。実際、ロシアの資産家の一部は海外に脱出している可能性があるとも報じられている。
しかし、だからといって、金融制裁がウラジーミル・プーチン大統領にウクライナからの撤退を決断させるようになるという楽観視はできない。第二次世界大戦以降、軍事力を伴わない制裁措置が成功したケースは5%くらいという実証研究もある。ただし、バイデン米政権関係者は、今回の措置は史上最も大きな打撃を伴う制裁であり、過去の事例とは異なるとしている。
英エコノミスト誌による2021年のロシア民主主義指数は3.24。世界167ヶ国中124位の非民主主義国家であり、こうした制裁への耐性は強いともいわれる。
今のところ、ロシアが核使用をちらつかせるので、核保有の米やNATOも迂闊に手が出せず、ウクライナに対する軍事的な支援とロシアへの経済制裁の組み合わせで対抗している。日本は欧米と歩調を合わせてやっている。
それでも、何もしないよりはSWIFTからのロシア排除やロシア中央銀行の資産凍結という制裁措置を発動する方が、政治的な交渉をするためにも望ましいのはいうまでもない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。