ロシアによるウクライナ侵攻が、アラブ首長国連邦(UAE)で開催中のドバイ万博にも影を落としている。
万博には192か国が参加。その中に日本はもちろん、ロシアやウクライナも含まれている。世界中の国々や国際機関が出展するパビリオンには、その国の国柄や国力が反映されるのが常だが、万博を使って自国が置かれた状況を最も強く国際社会にアピールしようとしているのがウクライナだ。2022年3月7日(現地時間)時点で、ウクライナ館の入口には国際社会の支援を呼びかけるゼレンスキー大統領のパネルが設置され、建物の壁はウクライナ支援のメッセージで埋め尽くされている。対するロシア館は「通常営業」。国際社会から厳しい目が注がれる中、2030年万博の招致をアピールするコーナーが目を引く。
ゼレンスキー大統領のパネルには「ウクライナとともに」
元々のウクライナ館のコンセプトは「点をつなぐ」。持続可能な生活のために環境技術の活用をアピールする内容だ。元々の展示内容も引き続き展示されているが、ロシアによる侵攻を反映した展示も加わった。まず、入館してすぐに入口の方を振り返ると、「ウクライナとともに」の文字が入ったゼレンスキー大統領のパネルが視界に入る。すぐ近くには電気自動車への充電を扱う企業が出展するコーナーがあり、モニターもある。元々は環境技術について説明する動画が流れていたとみられるが、今流されているのはゼレンスキー大統領のビデオメッセージだ。ビデオメッセージでは、14年にロシアが併合したクリミア半島も書き込まれた地図を前に、次のように訴えている。
「私たちの国には長い講義をする時間も、過去を論じる時間もないので、現在と未来について話す。私の背後には、国際的に定義された国境によるウクライナの地図がある。そして、それはどんな声明が出ようと変わらないだろう」
パビリオンの一角には、色とりどりの付箋を配る場所が設けられており、来場者が次々にメッセージを書き込んでいた。大半が英語で、「NO WAR」(戦争反対)「We stand with Ukraine」(我々はウクライナとともにある)いった内容が多い。建物中のありとあらゆる壁が、このメッセージで埋まっている。中には「from JAPAN」という一言とともに、日本語で「ウクライナに一刻も早く平和が訪れますように」と記したものもあった。「from JAPAN」のようにメッセージに書かれた国名は、数分間カウントして確認できただけでもUAE、ブルガリア、フランス、米国、フィリピン、ベルギー、タイ、レバノン、パキスタン、ミャンマー、パレスチナ、イラン、スペイン、カナダ、インド、ブラジル、ルワンダなどで、きわめて多様だ。観光客以外にも、万博にパビリオンを出展している各国の関係者がメッセージを残した可能性もありそうだ。
「通常営業」ロシア館は2030年万博招致アピール
一方のロシア館は「通常営業」が続く。「創造的心で未来を切り開く」がテーマで、作家のトルストイや科学者のメンデレーエフに焦点を当て、ロシアの創造性を強調する内容だ。入館直後に目に入るのが「EXPO2030 Moscow RUSSIA」の文字だ。ロシアは2025年大阪・関西万博の次にあたる2030年の万博をモスクワに招致したい考えで、旧ソ連時代を含めて、過去の万博に出展したパビリオンの模型が出迎える。モスクワ以外には韓国(釜山)、イタリア(ローマ)、ウクライナ(オデッサ)、サウジアラビア(リヤド)が立候補。開催地は23年に決まる予定だ。現時点のロシア館の展示には、プーチン大統領のメッセージや、ウクライナ侵攻を正当化するような展示は見当たらない。
万博はコロナ禍の影響で開催が1年間延期され、会期は21年10月から22年3月末まで。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)