「R-1」なぜZAZYは勝てなかったのか 識者が指摘する「フリップ芸の限界」とは

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   2022年3月6日の「R-1グランプリ」は、お見送り芸人しんいちさん(36)が優勝した。

   決勝でしんいちさんはZAZYさん(33)と対戦。結果は5人の審査員の投票が3-2に割れた結果、3票を獲得したしんいちさんが優勝を果たした。僅差での決着、優勝の決め手となったポイントは。ライターでお笑い研究家の鈴木旭氏に聞いた。

  • お見送り芸人しんいちさん(R-1グランプリ公式インスタグラムから)
    お見送り芸人しんいちさん(R-1グランプリ公式インスタグラムから)
  • ZAZYさん(R-1グランプリ公式インスタグラムから)
    ZAZYさん(R-1グランプリ公式インスタグラムから)
  • お見送り芸人しんいちさん(R-1グランプリ公式インスタグラムから)
  • ZAZYさん(R-1グランプリ公式インスタグラムから)

フリップ芸は「本人以外の要素が大きすぎる」

   決勝は、ファーストステージを1位通過したZAZYさんと、同点で2位に並んだしんいちさん、吉住さん(32)、「金の国」の渡部おにぎりさん(27)の中から決選投票で選ばれたしんいちさんが出場することになった。

   しんいちさんは、ファーストステージと決勝では歌に乗せたネタを披露する形式で戦った一方、ZAZYさんは電子化したフリップをディスプレイに表示するという形でネタを披露した。

   決勝では、5人の審査員のうち、陣内智則さんと小藪千豊さんがZAZYさんに、「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん、ハリウッドザコシショウさん、バカリズムさんがしんいちさんに投票した。

   決勝で相まみえた2人について、鈴木氏は、ZAZYさんや他の出場者のフリップ芸と比較しつつ、しんいちさんの勝因を以下のように分析した。

「ファーストステージの1番手で登場したkento fukayaさんの講評の際、バカリズムさんが言っていた『本人以外の要素が、ちょっとあまりにも大きかった』という箇所が象徴的だったと思います。

今回はZAZYさんやfukayaさんなどフリップ芸が目立ちましたが、『フリップや物にボケさせる』というのが、演者のポテンシャルを最大限に発揮させているかというと、必ずしもそうとは言えないとバカリズムさんはおっしゃっていました。この指摘は大きいと思います」

   また、鈴木氏は以下のようにも指摘した。

「バカリズムさんはしんいちさんに対し、ファーストステージではZAZYさんよりも高い点をつけたほか、決勝でもしんいちさんに投票した一方で、ザコシショウさんと野田クリスタルさんはファーストステージではより高得点を付けたZAZYさんを決勝では選ばず、しんいちさんに投票したのが意外でした。恐らく、お2人はZAZYさんのフリップ芸に対し、決勝ではもう少し変化が欲しいと思ったのではないでしょうか」

従来のようなフリップ芸では、もはや優勝は難しい

   ZAZYさんは2年連続で準優勝に甘んじた。これについて、フリップを使ったがゆえの限界はあったのだろうか。

「ZAZYさんは、昨年は電子化していない本物のフリップを使っていましたが、その際、フリップを固定していたクリップが外れないというアクシデントに見舞われてリズムを崩すという痛恨のミスは確かにありました。なので、2年同じ順位とはいえ、そこは少し状況が違うかと思います。

それでも、昨年の優勝者のゆりやんさんは自身を前面に出す演技だったことが響いたか、フリップ芸の中で最も面白かったと思われるZAZYさんを最後の最後で破ったのだと思います。そう考えると、全く個人的な意見ですが、フリップ芸には『絵に頼ってしまうこと』の限界があるように感じました」

   となると、今後はフリップ芸でR-1で優勝を狙うことは難しいと言えるのだろうか。

「従来のような『フリップをめくりつつ、演者がツッコむ』という形式では、もはや難しいでしょう。一方、可能性があるとするなら、演者としての立ち位置が特殊なものとなるでしょう。例えばバカリズムさんのネタ『地図バカ先生』は、生徒に指導するという体のボケを演じています。そのため、『絵に頼っている』とは言えない構造なのです。

視聴者は芸人のネタを見て笑うわけですから、基本的にはツッコミの視点になります。フリップを使うのなら、演者がツッコミ以外にどんなポテンシャルを提示できるのか。斬新な立ち位置を具現化できれば優勝の可能性はまだ残っていると言えるでしょう」

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)

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