パキスタンがロシアへの債務返済を放棄する――。SNSでこんな情報が飛び交っている。
ウクライナ危機を受けての都合の良すぎる"経済制裁"だとして、日本のまとめサイトが紹介している。しかし、情報源となった記事はフィクションに基づいていた。
「ローンの返済を永久に拒否」
「【速報】パキスタン、ロシアに経済制裁を発動! これまでの全てのローンの返済を永久に拒否」(保守速報)
「パキスタン、ロシアに経済制裁を課し、これまでの全てのローンの返済を永久に拒否」(ツイッター速報)
2022年3月1日以降、複数の日本のまとめサイトが上記のような記事を配信した。
いずれの記事も、海外企業が運営しているとみられるニュースサイト「The Fauxry」を情報源としている。パキスタンのイムラン・カーン首相が、ロシアへの経済制裁として10億ドル超の債務を放棄する意向だとの内容を転載している。
前述のツイッター速報のまとめ記事は、2日夕時点で4000以上リツイート(拡散)され、「斬新な借金踏み倒しだな」「それは経済制裁とは違わないか」などと評する声が多数寄せられている。
「フィクションかつ風刺を意図した作品です」
しかし、The Fauxryのサイト上には「本サイトのコンテンツは純粋に娯楽を目的としたものであり、読者はThe Fauxyの記事が本物であり真実であると混同しないようご注意ください」「示唆に富むコメディとインパクトのあるストーリーテリングを通じて、現代の若者にとって通常タブー視されるテーマについて会話を始めることを目的としています」(原文は英語)と書かれている。
The Fauxryの創設者は2日、J-CASTニュースの取材に、当該記事は「フィクションで風刺を意図した作品です」とメールで答えた。対外債務が膨らむパキスタン財政を嘲笑する狙いだったという。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、パキスタンの対外債務残高は19年度が1063億1200万ドル、20年度は1130万1300億ドル、21年度は1221億9900万ドルと増加の一途をたどる。
創設者によれば、サイト上で注意書きをしているものの「私たちは何度も大手メディアから真実のニュースとして取り上げられてきました」と明かした。