ウクライナ侵攻で利用可能性報道のアンカレッジ空港とは 露領空飛行禁止で浮上、冷戦期の寄港地

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   ウクライナ情勢が航空業界に与える影響が増している。欧州ではロシア航空機の領空通過を止める国が相次ぎ、ロシアも対抗して欧州各国からのロシア領空通過を禁止する措置に出た。

   欧州と東アジアの空路の最短ルートであるロシア領空の事実上の封鎖は、東アジア発着便にも影響する。代わりのルートの寄港地として、冷戦時代に日本発着線の寄港地でもあった米アラスカ州のアンカレッジ空港を利用する可能性も報道されている。

  • アンカレッジ空港(写真:AP/アフロ)
    アンカレッジ空港(写真:AP/アフロ)
  • アンカレッジ空港(写真:AP/アフロ)

欧州―アジアの最短ルートが閉鎖

   各社報道によると、2022年2月28日までに欧州の国が続々とロシア航空機の自国領空通過を差し止め 、対抗としてロシアもこれらの国々のロシア領空通過を禁じた。欧州以外ではカナダも同様の措置をとり、欧州のエアラインはロシア上空を避ける便や引き返す便が相次いだ。3月1日時点で日本のエアラインはまだロシア領空を飛行可能だが、欧州の航空会社による日本便は、3月1日時点で欠航もしくは所要時間が増す南寄りのルートで運航されている。

   極東と欧州を結ぶ最短ルートのロシア領空が飛行できない場合、北極周辺を経由する北回りルートや、中央アジアを経由する南回りルートが選択肢にあがる。ソ連当局が西側諸国のエアラインに領空を開放していなかった時代、北回りルートの中継地点にあったのがアンカレッジ空港だが、航空機の航続距離増と1980年代以降のソ連領空の開放で旅客便は寄港せず直行できるようになった。

   JALのアンカレッジ経由欧州線は1991年に廃止されて日本人旅行客には過去のものになっていたが、ウクライナ危機でにわかに航空業界のトピックに浮上した。ロイター通信は2月28日の記事で、国際線のいくつかの便が途中給油のためアンカレッジ空港に寄港する可能性に言及した。

   3月1日の現地メディア「アラスカニュースソース」の 報道では、複数の航空会社がロシア領空を避けた寄港地としてアンカレッジ空港を利用することを考慮し、空港の地上支援業者と連絡を取っているという空港職員の談話が報じられている。

   冷戦時代に比べると機体の航続距離が伸びているので、寄港せずとも北極回りでの運航は不可能ではない。冷戦時代からソ連領空を避けて運航していたフィンエアーの東京(成田)~ヘルシンキ線の距離は約1万1000キロメートルだが、現代のエアバスA350で約1万6000キロ、ボーイング787-9型で約1万5000キロの航続距離を持つ。それでも30年前の航空ルートが選択肢に浮上したニュースに、SNSでは航空ファンから驚きの声も上がった。

北米へのLCCも

   欧州情勢とは別に、アンカレッジ空港は東アジアから北米への経由地にもなりうる。アンカレッジを拠点とするLCCのノーザンパシフィック航空が2021年に発足し、アンカレッジ空港をハブに日本・韓国から北米への路線を22年に就航させる計画であるためだ。

   就航都市は東京(成田)・大阪(関西)・名古屋(中部)と韓国ソウル(仁川)、米国内ではニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルス・ラスベガス・オーランドを候補地とし、22年の第2・第3四半期にあたる7~12月の就航を目指している。米国への入国審査をアンカレッジで済ませることができるのもメリットだ。

   ブルームバーグビジネスウィークのWEB版報道(2月4日配信)によれば、ノーザンパシフィックの運賃は直行便に対して10~20%ほど安価な価格を検討している。

貨物便は旺盛

   旅客便は減少したアンカレッジ空港だが、貨物便は盛況を保っている。24時間運用可能で東アジアと北米の中間にあり、給油や乗務員交代の拠点として機能しているためだ。早く目的地に着くことが優先の旅客便と違い、貨物便は積載量の事情がある。目的地へ直行可能な機体でも燃料を満載しているとその分貨物搭載量が減ってしまうので、最大積載量の貨物を積み込み、燃料は途中給油で補うためにアンカレッジに寄港する。

    新型コロナウイルス拡大1年目の2020年でも貨物需要は衰えず、国際空港評議会(ACI)が21年4月に発表した統計で、アンカレッジ空港の2020年の貨物取扱量は米メンフィス、香港、上海に続いて4位を記録した。国際情勢が不穏当な中でも北米とアジアの間にある地の利を活かし、両地域の経済を支えている。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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