カメラとの距離が近くて「細かい部分があらわになるのがオンライン演劇」
―― コロナ禍で外出ができなくなったことで広がった「オンライン演劇」という形ですが、福岡から東京まで行かなくても稽古ができるなど、オンラインならではの良さもあると思います。田島さんとしては、どういったメリットを感じていますか。
田島: どこでも見られて、皆さんの日常生活の中に溶け込めるのがオンライン演劇の良さだと思います。決定的に違うのは、このぐらいの(カメラと接近した)距離感でお芝居することはなかなかないな、ということです。オンライン演劇では、ほとんど表情とセリフの言い回しでお芝居をするし、距離感が近い分、すごく小さな変化でも伝わります。だからこそ、本当に繊細で、感情というものをすごく大事にして届けなければいけないのがオンライン劇だな、と改めて思います。ドラマであれば、主人公がセリフを言っていれば、それは主人公のカットです。ですが、オンライン演劇では、主人公が喋っていても(同じ画面の)その周りに人がいたりします。そういうとき、周りの人が画角の中でどれだけ戦えるか、というのはすごく力が必要です。相手の人が話しているときにどういう顔をしているか、その子にだけ注目することができるのが、オンライン演劇の良さだと思います。誰もが最前列のセンターで見られるようなものなので、ある出演者に注目していたら、ずっとその子を見続けることができます。目線、目の動きがしっかり分かる距離感なので、そういう一つ一つの細かい部分があらわになるのがオンライン演劇だと思います。
―― そう考えると、仮にオフラインの演劇が普通に上演できるようになったとしても、オンラインには独自の良さがあるので、ジャンルとして発展していくかもしれませんね。
田島: オンライン演劇は、この2年間でどんどん進化しているので、このジャンル、文化というものが、ずっと続いていってほしいと思います。オンライン演劇は可能性がまだまだある分野だと思うので、どんどん進化し続けられたらと思います。
―― 逆にオンライン演劇で難しい点はありますか。やはり、タイムラグの問題ですか。
田島: タイムラグもそうですし、自分たちで画面をオフにしたり、音声ミュート解除したり、が結構あるんですよ。稽古していても「ミュートになってますよ!」みたいなことがあります。シーンの出ハケ(出入り)もそうです。「相手のこのタイミングで出る」とか「ちょっと3秒待って出る」とか、秒数でカウントしないと分からないので、そこはやはり難しいと感じます。対面ではないので「相手の人の呼吸に合わせる」ということも難しいです。そんな中で、相手とパズルのピースを合わせていくように感情を一つずつぶつけ合っていくというのは、何度も稽古しないと難しいと思います。
―― 2月13日放送の「HKT48ラジオ聴かナイト!」(KBCラジオ)では、「日付を越えるくらいまで稽古をやっている」と話していました。オンラインならではのスケジュールの合わせやすさですね。
田島: それはありますね。夜更けとかまでやるわけではありませんが、やはり家でいつまででもできちゃう、というオンラインの特徴ですね。今回は本番も日付を越えるんですよ。
―― なるほど、後編は22時半スタートですね。
田島: そうなんですよ。退去の時間も考えると、(オフラインの)舞台だと、そんな時間に始めるって難しいじゃないですか。皆さんがお仕事終わった後や、帰宅後にビール片手に見られたりするのは、オンラインの強みだと思います。稽古について言えば、隙間時間に入れ込めるというのもあります。例えば仕事と仕事の合間に、「ここは2時間休憩があるので、ちょっとこのシーンの稽古入れようか」とか...。どこでもできる、というのはオンラインの強みだと思います。
―― ざっくり言うと、スケジュールを突っ込みやすいわけですね...(笑)。昨日(2月14日)は21時頃まで劇場公演があり、中継で拝見していましたが、その後も稽古があったんですよね。水上凜巳花(りみか)さん(18)の卒業発表で感情が揺れ動く中で、感情の振れ幅の大きい演技をするのは、なかなか大変です。
田島: 吉川あすなと田島芽瑠を交互に入れ替えて、本当に二重人格みたいな生活で...。