ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使が2022年2月25日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、ウクライナ侵攻の正当性を主張した。
ガルージン氏は、ロシアが行っている「特別軍事作戦」の目的は、ウクライナ東部のドンバス地方にある親ロシア派2地域の住民を「キエフ政権が行っている虐殺から守るため」などと、ロシア側の従来の主張を繰り返した(ウクライナ側は虐殺を否定)。ドンバス地方から離れた場所でも攻撃が行われている理由については、北大西洋条約機構(NATO)の拡大から「ロシアの安全保障上の利益を確保する」ためだとした。ロシアが掌握し、放射性物質の拡散が懸念されるチェルノブイリ原子力発電所については「安全かつ責任ある取り扱い」を主張した。
「NATO拡大でダメージ受けているロシアの安全保障上の利益を確保」
ガルージン氏の4時間前には、同じ場所でウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が会見している。コルスンスキー氏は、黒海北西部にあるズミイヌイ島(蛇島)がロシアの攻撃を受けて25人が死亡したとして、
「この島はドンバスから2000キロ離れている。ガルージン氏は日本語が上手く『我々はウクライナを襲っているのではない。これは戦争ではなく、ドンバスへの対応をしているだけだ』と言うだろう」
などとロシア側の主張の矛盾を指摘していた。
この点を指摘されたガルージン氏は、ロシア側が「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナ侵攻の目的について、
「キエフ政権が行っている虐殺から(ドンバス地方にあり、ロシアが独自に独立を承認した)『ドネツク人民共和国』と『ルガンスク人民共和国』の人々を守る」
「NATOの軍事インフラ、この30年の加盟国の拡大で大きなダメージを受けているロシアの安全保障上の利益を確保する」
などと述べた。
チェルノブイリ原発の状況は「まだロシア側の発表に接しておらず...」
ドンバス地域を巡る紛争の停戦を盛り込んだ「ミンスク合意」については、
「合意上の義務を履行するようにウクライナ政府に求めてきたが、残念ながらこういった努力の全ては拒否されたり無視されたりした」
とした。
コルスンスキー氏の会見では、チェルノブイリ原発をロシア側が掌握し、ロシア側は管理のノウハウがないため、放射性物質が拡散する危険を指摘していた。ガルージン氏は、原発の状況をめぐる報道は把握しているとしながらも、「まだロシア側の発表に接しておらず、現時点では、この情報を否定したり確認したりはできない」。その上で次のように主張し、懸念の打ち消しを図った。
「ロシア軍の活動範囲内にある可能性のあるすべての核施設について、安全かつ責任ある取り扱いのために、あらゆることが行われることを保証する」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)