ベネッセの女性向け口コミサイト「ウィメンズパーク」が2022年1月末、20年以上の歴史にひっそりと幕を閉じた。
"国内最大規模の女性向けサイト"として、家事や育児などの悩みを相談できる場として多くの支持を集めてきただけに、利用者からは惜しむ声が相次いでいる。同社にこれまでの歩みを振り返ってもらった。
「同じ悩みを持つ人がいるってだけで安心したなあ」
ウィメンズパークは「最強のママ友をもうひとり」を合言葉に、インターネット黎明期の2000年5月に始まった。
出産や育児、家事、仕事、趣味など日常の悩みを相談、情報交換できる場として人気を博した。テーマ別に投稿が楽しめる「おしゃべり広場」と産婦人科や保育園などの体験談が集まった「施設探し」が主要コンテンツだった。
2012年の発表では、月間ページビュー(PV)は4億、会員は400万人、投稿は累計4000万件と驚異的な数字を叩き出し、「国内最大級規模の女性向けサイト」をうたっていた。
会員との座談会を基にした楽曲制作や、口コミと投票による商品開発など、ユーザーのアクティブ率の高さに支えられた先進的な試みも目立った。
しかし、21年7月にサービス終了が告知され、翌年1月末で閉鎖した。
SNSでは終了を受けて、
「離婚当時はまだSNSも普及してなくてWP(ウィメンズパーク)の『家族部屋』で相談しまくってかなり助けられた」
「あまり投稿はしなかったけど同じ悩みを持つ人がいるってだけで安心したなあ」
「育児中の女性の本音渦巻く優しさと嫉妬と常識と非常識の世界で、リアルじゃないからこそのリアルさがあってよかった」
などの回顧や、「子育てはもちろん悩み事ができる度にのぞいていました。本当にお世話になってたから寂しい...」「生きていく中で心の支えだったので本当に残念です」と惜しむ声が多数書き込まれている。
ベネッセ「一定の役割を果たし終えた」
そのほか、
「ここには書き尽くせないほどの沢山の『世の中』を見せてもらった。勉強になった。ありがとうございました」
「娘たちが生まれた時から15年間何でも相談に乗ってもらいママ友よりもママ友でした本当にお世話になりました」
「子供の熱について相談したら、すごく頼りになる心強いアドバイスが来て有り難かった。見ず知らずのママ先輩方ありがとう!!」
と運営会社や"ママ友"への感慨深げな感謝や、「終わりがあっけなすぎる せめて過去スレとか残して欲しかった」「これだけの膨大な知見がネット上から消えるのって、ちょっと残念」と貴重なデータベースの喪失を嘆く声も少なくなかった。
ベネッセは終了理由について、取引先向けに「この20余年の間に、全国の母親を取り巻くメディア環境は大きく変化を遂げ、『ウィメンズパーク』は一定の役割を果たし終えたと認識しております」と説明している。
媒体資料によれば、19年1~3月の月間平均PVは6138万、20年9月は4138万だった。
サービス担当者の今の思いは
運営に携わったベネッセの担当者は2月中旬、J-CASTニュースの取材に、力を入れていた点に「安心できる場の雰囲気づくり」を挙げる。
「シスオペ」と呼ばれる管理者が目視で投稿を確認し、トラブルの元となるような内容には積極的に対応していた。例えば「育児グッズの裏技」と称した投稿があり、「本来の使い方と異なり赤ちゃんにけがの恐れがある」旨の注意喚起をしたことがあった。「担当者が一歩踏み込んで場に出てくるようなコミュニティサービスはあまりなく、ユニーク性があったのでは」と振り返る。
「実在する女性」であることを確かめるため、入会時に登録する住所宛てに手紙を送り、本人確認をしていた時期もあった。
また、細分化されたニーズに対応できるよう、コンテンツをきめ細かく整備したという。
「子どもの年齢を基軸とした課題整理をし、それに合わせてコミュニティーのテーマを細かく設定していました。子どもがどれくらい成長したとしても、気になる課題を解決できるお部屋があったと思います」
そのため、「○○区 産婦人科」といった出産や育児に関する具体的なワードがネットで検索された際、ウィメンズパークのページが上位に表示されることが多かったという。
利用者からの惜しむ声については「お客様との近さは感じていました。これまでリニューアルやコンテンツ追加、終了とさまざまな動きがありましたが、そのたびにお客様はすぐに反応してくれ、積極的にフィードバックをいただけました。最後のコンテンツとしてウィメンズパークでの思い出を書き込んでいただけるお部屋を作ったのですが、運営へのたくさんの感謝をいただけてジーンとくるものがありました。私たちとしてもお客様には感謝しております」。
同社は妊娠・育児中の親に向けたサービスとして、スマートフォン向けアプリ「まいにちのたまひよ」を案内する。出産年月が同じ人たちが集まるコミュニティー機能を備えている。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)