ロシアによるウクライナ侵攻の緊迫感が増す中、経済協力を持ちかけるなどした岸田文雄首相の外交手腕に対して、自民党内からも不満が噴出していると報じられている。
岸田首相は、2022年2月24日にG7首脳テレビ会議に臨む予定だが、影響力を発揮するためには、何が求められているのだろうか。
ロシアに経済協力を持ちかけ、「制裁を検討しているのに」と批判
「経済制裁の一辺倒がいいのかと言えば、分からないところがあります。確かに、話し合いに越したことはありませんが、今はそんな状況ではないと思いますね」
プーチン大統領がいよいよウクライナへの派兵を命じたと2022年2月22日に報じられ、政治評論家の有馬晴海さんは、J-CASTニュースの取材にこう話した。
岸田首相は同日、「ロシア政府を強く非難する」と記者団に強調したと報じられた。24日にはこの問題を議論するG7首脳会議に臨むが、ネット上では、その外交手腕について早くも不安視する声が相次いでいる。それは、岸田首相がこれまで「聞く耳」ばかりを優先してきたからだ。
ロシアの侵攻見通しが報じられる中、岸田首相の意向を受けた林芳正外相は15日、ロシアの閣僚と経済協力についてのテレビ会合を行った。ウクライナ侵攻を踏み留まらせる狙いもあるとみられるが、報道によると、自民党内からは、制裁を検討している状況を考えていないと異論が噴出した。高市早苗政調会長も17日の政調審議会で、「G7の結束を乱そうとするロシアを利することになる」と岸田外交を強く批判した。
こうした批判を念頭に置いたのか、岸田首相は、ロシアの派兵命令を受け、「国際社会と連携し、制裁を含む対応について調整していく」と述べた。それでも、ネット上では、「コメントからは日本政府としての主体性が見えない」「非難声明出すだけでは何も守れない」と疑問を呈する声が相次いでいる。
外交ではほかに、韓国の意向を受けて岸田首相は佐渡島の金山を世界文化遺産に推薦しない意向だとされたが、党内の反発を受けて推薦に転じたと報じられたことがある。また、新型コロナウイルスの感染防止に向けたワクチンの3回目接種が進まず、死者や重症者が増えたことについても、批判が多い。各メディアの内閣支持率も横ばいか下落傾向にあるとされ、時事通信の2月中旬の世論調査では、前月から8.3ポイント減って43.4%にまで低下した。
有馬晴海さん「アメリカとの同盟を軸に考えるべきでは」
岸田内閣のロシア対応について、前出の有馬さんは、取材にこう話した。
「岸田さんは、安倍内閣のときに4年半外相をしていましたが、安倍さんとの関係から務めており、外交が得意とは思えません。経済協力で収まるならいいですが、さすがに見通しが甘かったのではないでしょうか。プーチン大統領と電話会談をするにしても、解決のために何か手を持っていなければ、『聞く耳』が誤解されて相手を認めたことにもなりかねません。安倍さんがやっていたように、アメリカとの同盟を軸に考えるべきではなかったかと思います」
遅れが報じられるコロナ対策についても、こう指摘した。
「国会などでは、現状を認識しており、考えなければいけないと強調しています。しかし、リーダーシップを持って、みなが納得するような判断をしてほしいと思いますね。最近は、前首相の菅義偉さんの方がよくやっていたと言われてしまっています」
その菅前首相は、発言力の強い安倍元首相に見習って、自らの派閥を作ろうと動いているとも報じられている。
「菅さんは、無派閥で総裁選に出られなかった反省から、自ら発言力を持って、仲がいい河野太郎広報本部長などを立てて行こうと考えているのだと思います。これに対して、岸田さんは、出身派閥の旧宏池会を大宏池会にしたいと動いています。野党の力がなく無風状態ですので、自民党は、岸田さんで夏の参院選を乗り切ろうと今は考えていると思います。ただ、支持率が落ちてきたら危険信号で、党内では、今後3年間も岸田さんでいいのかと疑問の声も多く、河野さんのほか、高市さんを担ぎ上げる動きも出るかもしれませんね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)