「コロナ禍のコミケ」知られざる舞台裏 11万人参加も「本来の姿ではない」...運営が語った葛藤

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政府のワクチン・検査パッケージを導入した狙い

    ――政府の「ワクチン・検査パッケージ」を導入した狙いについてお聞かせください。

市川さん:「我々は、コミケ当日にコロナが収まっているのか、緊急事態宣言が発出されている状態なのか、まん延防止等重点措置などが実施されているのか分からない状態で準備を進めてきました。とくに開催準備を進めていた9月ごろは、デルタ株が出現し先が見えない状態でした。
もう中止や延期はしたくないという気持ちがあり、まず実施するためにどうしたらいいか最善の手段を探しているなかで、政府のワクチン・検査パッケージを耳にしました。導入すれば、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等いずれの状態であっても行動制限の緩和の適用が受けられ、開催ができる可能性がありましたので導入しました。
またコロナ禍では国内最大級のイベント開催となりますので、通常求められる以上の対策・対応を自主的に取ってかなければ、世の中に受け入れられないという点からも実施を決断しました。
この間、ワクチン・検査パッケージの導入や技術実証への参加に関連しての内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室他の政府機関へのアプローチにおいては、藤末健三議員には大変お世話になりました。また開催直前、山田太郎議員には、オミクロン株の流行による開催への影響につき、この年のGWに赤ブーブー通信社さんの同人誌即売会で起きた開催中止を巡る混乱のようなことが起きないよう、政府のコミットを取りつけていただいたりと、こちらも感謝しております」

    ――感染症対策に伴う開催様式の変化により、サークルの同人誌の頒布数などに変化はあったのでしょうか。

市川さん:「次回の参加申し込み時のアンケートで結果が分かるので、まだ詳細は不明ですが、やっぱり少なかったのではないかと思います。
参加者5万5000人というのは、世の中から見れば大きい数字ですけれども、コミックマーケットから見れば通常の3分の1とか4分の1の数です。参加人数が減っていることを受けて、持ってくる同人誌の数を減らしたサークルもいたのではないかと思います。顔見知りのサークルとお話をすると、買い物の量がいつもより少なかったという話も聞きました」

    ――今回のコミケを実施するにあたり、参考にしたイベントはありますか。

市川さん:「近い形で実施している即売会は全て参考にさせてもらいました。
また、サッカーや野球、企業イベントなど、先行して開かれた規模の大きいイベントも参考にしました。
有識者の先生に伺った話では、野球場やイベント会場自体は十分な換気を行っているので普通はクラスターが起こらないとのことですが、控室などはリスクが高いとのことでしたので、コミケットでもそういった箇所はきちんとした感染症対策を行うよう意識しました」

    ――参考にする中で、「コミックマーケット」だからこそ苦労した点や、コミックマーケットとしてこだわった点はありましたか。

市川さん:「コミックマーケットは人数が多いので、一番苦労したのは人流の管理ですね。いくら人数を減らしたと言えども、1日5万5000人が集まる。スタッフの数も多く、コロナ禍で減ったとはいえ2500人もいます。とにかく人が多いので、密を防ぐにはどうしたらいいのか。
スタッフや参加者を感染させないために、まっすぐ帰るよう呼び掛けるなどしました。スタッフの一部から期間外・会場外の外部との交流による感染者が出てはしまい、申し訳なかったのですが、それでもコミケに参加される大半の方々はルールを守ってくださりました。大声を出す人もマスクを外す人もほとんどおらず、きちんと取り組んでくれて本当にありがたく思いました」

    準備会は22年1月14日の発表で、スタッフ2人を含む参加者ら計10人がPCR検査で陽性となったことが確認された、と伝えた。ただ、当人らへの聞き取りなどの結果、いずれも会場外・会期後に感染した可能性が高い、としている。それ以外に感染者に関する報告は受けていないという。

    ――このほか様々な感染症対策を実施する中で苦労した点はありますか。

安田さん:「飲食の問題が難しかったですね。飲み物は飲んでもらわないと倒れてしまう可能性があるので、できる限り気をつけて、さっと飲んですぐにマスクを着用するように呼び掛けたんですけれども、食べ物がやはり難しいんですよね。どうしても一般参加の方々は会場の指定したエリア、2か所ぐらいでしか軽食をとることができません。そこだって満足に休憩がとれるほどの椅子やスペースを用意できているわけではない。
朝もきちんと食べずに来てしまい、お昼も満足に食べられない人はゼロではありません。飲食の制限を厳しくしたくはないのですが、感染症対策が重要視されているなか、会話もご飯も控えてと呼び掛けざるを得ない状況になってしまいました。
参加される方にとって本当に大変な点だったと思います。これは感染症対策で苦労した点というよりは、心苦しい点でもありました」

    ――コロナ禍以前は、「牛串」などのケータリングサービスでにぎわい、即売会グルメを楽しまれる方も多かったですよね。

安田さん:「実は毎回ケータリングには力を入れていました。コラボメニューを開発してもらったり、冬の最終日には年越しそばを出してもらったり、いろいろ工夫しているんです。それをみんなで楽しく食べるというのもイベントの1つでした。コミケのケータリングを題材にした同人誌を作られる方もいらっしゃって。
しかしコロナ禍ではできない状態です。いずれ再開できる状況になったら、やりたいなとは思っています」
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