高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
NHK受信料の現行制度が「時代遅れ」である理由

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   政府は2022年2月4日、放送法と電波法の改正案を閣議決定した。NHK受信料の値下げ原資を確保するための積立金制度創設、外資規制の見直しや携帯電話の周波数を再配分する制度の導入を盛り込んだ。

   NHKは、2022年度予算の中で、収入、支出の総額6890億円の予算規模に対し、繰越金の見込み額が1980億円となっている。このため、23年度には受信料値下げする予定だ。

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欧州では、各国の公共放送で受信料制度見直しの動き

   値下げそれ自体は悪いことではないが、そもそも今の受信料制度のままでいいのか。筆者は、これまで様々なNHK改革をいってきた。1年ちょっと前に、Eテレの周波数帯の売却をいったら、Eテレ「番組全廃止」とすり替えられてマスコミからパッシングを受けた(現代ビジネス20年12月7日:「Eテレ売却論」を「番組全廃止」とすり替える、マスコミの「常套手段」)。Eテレの周波数帯を売却した上で、それをネットで活用し、Eテレ番組はそこで流せばいいので、「番組廃止論」でないのに、酷い叩かれようだった。こころある識者は、これくらいの荒療治をしないとNHKの将来が真っ暗であることはわかっているが、なにしろNHK関係者は多いので、なりふり構わず筆者を批判した。

   さて、今のNHK受信料制度は、受信機の設置者が受信料を支払いNHKが徴収するという仕組みだ。さすがに今の時代でふさわしいかといえば、時代遅れの感がある。

   ちなみに、欧州の公共放送では近年こうした受信料制度の見直しが各国で行われている。ドイツは2013年受信料制度を廃止し受信機保有の有無にかかわらず負担する「放送負担金」制度に移行した。フィンランドは2012年受信料制度を廃止し公共放送税に移行した。スウェーデンは2019年に受信料制度が廃止され「公共サービス税」に移行した。ノルウェーも2020年に受信料制度が廃止され「公共サービス税」に移行した。デンマークでも、2022年末までに受信料制度は廃止され税金に切り替える予定だ。スイスでも、2019年から従来の受信料制度に代え受信機保有の有無にかかわらず負担する制度にしている。

   NHKが常に手本としているイギリスBBCについて、ドリース・デジタル・文化・メディア・スポーツ相は1月17日、受信料制度について「適切かどうかを今こそ真剣に問うべき時だ」と述べ、制度見直しに向けた議論を始める考えを示した。

「すべての人が負担」「見たい人が負担」という2つの考え方

   今の受信料制度を見直す際、受信機の有無に関わらず、(1)すべての人が負担(2)見たい人が負担――という2つの考え方がある。もちろん、この2つは相反するものではないので、組み合わせも可能だ。今の技術では、スクランブル化で(2)も可能である。

   国会で放送法と電波法の改正案が議論されるのであれば、その際、現在の受信料制度の見直しも議論すべきだろう。ちなみに、筆者は、(1)と(2)の組み合わせで、NHKの番組のうち民放と競合している部分は(2)で対応し、民放が出来ない部分だけを(1)という立場だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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