TBS系の朝の情報番組「ラヴィット!」で出演者が「化学調味料」と発言し、その後にアナウンサーが「うま味調味料」と訂正するハプニングがあった。
現在では、家庭用調味料の味の素などをうまみ調味料と呼んでいるが、「化学調味料無添加」との表現はネット検索でも出てくる。いったい、どうなっているのだろうか。
「うま味調味料のことでした」と山本アナが放送中に訂正
東京都世田谷区内のレストランが作ったパン屋について、お笑い芸人のおいでやす小田さん(43)が、そのパンが美味しい理由をクイズで問われた。2022年2月7日に生放送された番組内で見られた1シーンだ。
すると、小田さんは、「化学調味料」とボケをかます。すかさず、「そんな訳ないやろ!」と自身でツッコミを入れ、スタジオに笑いが広がった。
番組は、その後も続いたが、10分ぐらいして、山本里菜アナウンサーが小田さんの発言について訂正を入れた。
「先ほど、小田さんから調味料に触れるお話がありましたが、うま味調味料のことでした」
小田さんの発言の後、「化学調味料」という表現は使わないのではとネット上の一部で突っ込まれてはいた。しかし、訂正を受けて「言っちゃあかんのか」「初めて知った」と驚く書き込みも相次いでいる。また、「こういうところがテレビは窮屈だな」と首をかしげる向きも一部であった。
日本うま味調味料協会や味の素のサイトによると、「化学調味料」という表現は、1950年代半ばにNHKの料理番組で、公共放送の立場から製品名を呼べないため、一般名称として使われていた。しかし、この名称では、うま味が科学的に認められた5つの基本的な味の1つという特性が表現されていない、さとうきびなどを元に微生物による発酵で作る製法への理解が得られないことを理由に、80年代以降は「うま味調味料」という名称が使われている。
ただ、ネット上を検索すると、「化学調味料無添加」「化学調味料不使用」とマイナスの意味で広く使われている。小田さんも、その意味でこの表現を使ったのかもしれない。
名称は一般に普及しておらず、業界は今後の使用に期待
とはいえ、TBSの放送で訂正が入ったように、こうした表現は使うべきではなく、「うま味調味料」と言うべきなのだろうか。
日本うま味調味料協会の専務理事は2月7日、化学調味料という表現についてJ-CASTニュースの取材にこう説明した。
「化学調味料には、きちんとした定義はありませんが、現在はこれというものはありません。使っていたとしても、正確な表現ではなく、協会としては、表現を直すよう努力しています。テレビなどのメディアとも話すことがあり、そうした機会を通じて、ご認識下さったのかもしれません」
ただ、「うま味調味料」という名称が一般にまだ普及していないことは認めた。
味の素などの家庭用調味料では、「うま味調味料」と表示されているが、調味料を含んだ商品では、単に「調味料」と表示されていることが多い。この点については、法律の文言が変わっていないからだと説明し、今後は、「うま味調味料」と表示されるようになればいいと期待を示した。
「調味料は、目立つ製品ではないですが、使われなくなったわけではありません。横ばいや微減で推移しており、成熟した製品だと考えています。業務用としても、スナック菓子やスープなどに使われて、消費が伸びています」
TBSも会員になっている日本民間放送連盟は7日、化学調味料という表現について広報担当者が取材にこう話した。
「いわゆる放送禁止用語というのを民放連で決めているわけではありません。各社の判断で、表現について控えよう、言い換えようと気を付けています。今回は、恐らく業界の方々に配慮して、言い換えたのではないかと思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)