韓国側が猛反発した北京五輪「韓服演出」 中国メディアは火消し?「緊急収束」報道に見た思惑

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   2022年2月4日に行われた北京冬季五輪の開会式の演出をめぐり、韓国政界が反発している。韓国の伝統衣装、韓服(ハンボク)を来た女性が中国国旗を運ぶ演出が、「韓国の文化を奪っている」というのだ。

   こういった批判には鋭く反論することが多い中国メディアは、今回は抑制的だ。演出への批判は妥当ではないと指摘する韓国側の報道も紹介している。中国側としては、事態がエスカレートするのを避ける狙いもありそうだ。

  • 北京五輪の開会式では、朝鮮族を代表するとみられる女性がピンクと白の韓服姿で出演した場面が韓国で問題になった(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
    北京五輪の開会式では、朝鮮族を代表するとみられる女性がピンクと白の韓服姿で出演した場面が韓国で問題になった(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
  • 北京五輪の開会式では、朝鮮族を代表するとみられる女性がピンクと白の韓服姿で出演した場面が韓国で問題になった(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

文化体育観光相「両国間の良好な関係に誤解が生じる可能性」

   問題になったのは、中国国内の各民族が中国国旗を運ぶ場面。朝鮮族を代表するとみられる女性が、ピンクと白の韓服姿で出演した。

   これまでも韓国では、高句麗など朝鮮半島にあった国家を中国の一部だとみなしたり、韓服やキムチの起源が中国にあるかのように主張したりすることを「文化工程」と呼んで反発する動きがあった。このことを念頭に、与党「共に民主党」の大統領候補、李在明(イ・ジェミョン)氏はフェイスブックに

「文化を持っていかないで。文化工程反対」

と書き込み、演出に不快感を表明。保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏も演出を批判した。

   SBSテレビによると、開会式に出席した韓国の黄熙(ファン・ヒ)文化体育観光相は、

「少数民族とは、その民族がひとつの国家に成長できなかった場合を主に指す」

として、韓国が単一国家として存在している以上、朝鮮族は少数民族には当たらないとの主張を展開。その上で、

「両国間の良好な関係に誤解が生じる可能性もある」

とした。外交的な抗議を行う必要は否定したが、必要であれば中国の政府関係者に会って韓国の国内世論について伝える必要があるとも説明したという。

   朝鮮日報によると、韓国国会の朴炳錫(パク・ビョンソク)議長は、栗戦書・全国人民代表大会常務委員長との会談で、「相互文化に対する理解と尊重が必要」だとして、韓国国内から出ている「議論と懸念について立場を表明した」という。

環球時報、「韓国政界は時代錯誤」の部分を太字で引用

   中国メディアも、この問題を黙殺しているわけではない。ただ、問題が沈静化していることを強調する報道ぶりだ。例えば中国共産党系の環球時報が2月7日午前に配信した記事の見出しは「開会式で韓国の誰かが煽った『韓服論争』、韓国政府3部門が緊急収束!」だ。

   記事では、開会式が「多くの国際メディアから賞賛と評価を得た」とする一方で、韓国側の騒動について

「一部の韓国人記者は、開会式での朝鮮族の衣装や長太鼓に注目した報道を行い、韓国日報など一部のメディアは『中国が文化工程を行おうとしている』と非難した。韓国の政治家や国民感情をあおることを生業とするいわゆる『学者』が憶測で追随している」

などと紹介している。記事ではその後の展開もフォロー。

「ポピュリズムに基づく誤った世論に直面し、韓国政府は説明に踏み切らざるを得なかった」

として、上記の朴議長の対応や、韓国外務省関係者の

「韓国は中国側に対し、互いに固有の文化を尊重し、文化の多様性を尊重した上で相互理解を促進する必要があるという立場を明らかにし続け、今後も相応の努力を続けていく」

といった談話を紹介している。

   さらに、「韓国でも冷静な声が聞かれるようになってきた」として、開会式の演出への非難が妥当ではないと指摘する韓国メディアの報道も伝えている。引用された記事のひとつがハンギョレ新聞のコラムで、

「特に反中感情に便乗し、我先に非難の声をあげる韓国政界の姿は、どこもかしこも『元祖』だと主張する飲食店の看板のように時代錯誤的だ」

という部分は太字のフォントで強調して引用するほどだ。ハンギョレの記事は

「与野党が一様に国民感情を刺激する姿は、嫌悪の競争でも繰り広げているかのようだ。世界を魅了した韓国文化の力は自由、包容、多様性から生まれる。あえて排他的所有権を主張し、消耗的論争をする理由はない」

とも説いている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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