閉店セールをずっと続けている店だと思って、貼り紙をよく見たら――
「おちょぼさん」の愛称で親しまれている千代保稲荷神社(岐阜県海津市)。その参道にある和雑貨屋に関するツイートがちょっとした話題になっている。「閉店」の貼り紙に、小さな文字で「したくない」と書かれていた、というのだ。
「『この店ずっと閉店セールやってるなぁ』と思ってた」
話題となったのは、和雑貨やカバン・傘などを取り扱う「和楽」というお店だ。店頭を通りがかったツイッターユーザー・よごれん(@yogoren)さんは2022年2月1日、店の外観を撮影し、こうツイートした。
「だいぶ前から『この店ずっと閉店セールやってるなぁ』と思ってたけど、よく見たら違った」
写真には、「閉店」「SALE」などと大書されたポップが。しかし、ポップを拡大してみると、「閉店」の文字の下に小さく「は、したくない」と付け足されていた。つまり、
「閉店は、したくないセール」
というわけだ。
取材に対し、よごれんさんは、千代保稲荷神社で毎月末に行われるお祭り「月並祭」に訪れた際に撮影したと説明する。1年ほど前からこの和雑貨屋のセールを気にかけており、「いつになったら閉店するんだろう?」という疑問を持っていた。
しかし閉店セールでないことに気が付き、驚きをツイッターで共有した。
「こんなことある?という驚きと、おそらく既存品のポップを使ってるのだと思いますが、斬新すぎる活用術に感心し、これを多くの人と分かち合いたいと思ったのでツイートしました」
このままでは本当に閉店してしまう
取材に応じた和楽の店長・岡野寿一さんは、「閉店は、したくないセール」は1年ほど前から行っているとして、実施した経緯などをこう説明する。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、和楽の客足は減っていた。閉店も検討はしたが、19年続けてきた店を閉じるのは気が引けたのだという。しかしこのままでは本当に閉店せざるを得ない状況となってしまう。そこで何とかして集客できないか、インパクトのあることをしようとして思いついたのが「閉店は、したくないセール」だった。
既存の「閉店セール」のポップを用意し、「は、したくない」と書き加えた。このほか店内の様々な個所に「閉店しないためのセール」などの自作ポップを掲示した。商品はほとんど2割以上を割り引いた特別価格で販売している。
客の反応は様々だった。「胡散臭いな」という反応をする人もいれば、「なるほどね」「面白いな」と笑う人もいた。
客はシニア世代が中心だが、時折若い人が立ち寄って、ポップを撮影していく様子が見られたという。そして撮影された店頭の様子がツイッターで拡散され、リプライには「こういう手の混んだ告知 私は好きです笑」「いいねえ」といった好意的な声が寄せられている。
こうした反響を受けて岡野さんは、「インパクトを狙っていたので、こうした反応があって良かった」と述べた。