いなくていい生き物なんていない
記者が最後に聞いてみた質問、それは、自然界におけるゴキブリの役割についてだった。
――生態系の中におけるゴキブリの役割とは何でしょうか?
柳澤:やはり、分解者としての役割ですね。落ち葉や動物の死骸を分解することや、朽木を食べて分解することで森林の新陳代謝に貢献しています。他の生き物の餌になるという形でも貢献していますし、後は植物の種を運ぶということが最近分かってきています。
――つまり、ゴキブリは実は生態系には無くてはならないということでしょうか?
柳澤:無くてはならないですね。やっぱり皆さん毛嫌いしますけど、生態系には欠かせないですね。
――ゴキブリでも生態系に無くてはならないということは、いなくていい生き物なんていないということでしょうか?
柳澤:そうだと思います。絶滅していい生き物なんていないと思います。どんな生き物も生態系の中で何かしらの役割を担っていますが、人間が知っているのはそれのごく一部だけですから、「この生き物がいなくなったらどんな影響が出るか」なんて全く未知のことなんです。仮にある種が絶滅した後にその生き物が担っていた役割が分かった場合、絶滅したことを嘆いても遅いですからね。
柳澤静磨さん プロフィール
やなぎさわ・しずま 1995年2月5日生まれ。東京都八王子市出身。日本自然環境専門学校(新潟市)を卒業後、2016年4月から磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)の職員として勤務。2018年2月から同園で「ゴキブリ展」を開催する傍ら、2020年からは法政大学の島野智之教授と鹿児島大学の坂巻祥孝准教授と共にゴキブリの新種を発表し、ゴキブリの研究に邁進。2021年12月には、自身5種類目となる「アカズミゴキブリ」を発表するなどゴキブリ研究家として注目を集めているほか、ゴキブリの専門家として「ゴキブリスト」を自称している。