56年前に発見された標本が新種であると突き止めた!
研究に邁進する柳澤さんは、2020年11月と2021年6月に日本産のゴキブリの新種を3種も立て続けに発表したほか、同年8月には4種類目(海外種)を発見した。さらに、同年12月には5種類目となる日本種を発見している。
――怒涛の勢いで新種を見つけていらっしゃいますが、4種類目の「イツツボシルリゴキブリ」の研究については「五十六年前にタイ・チェンマイで採取されたゴキブリを新種だと発表した」と中日新聞が当時報じていました。「新種の発見」なのに、時系列がねじれているように感じられるんですが......これは一体?
柳澤:それは「すでに捕獲され標本にされていたものが実は新種だったことを僕たちが発見した」ということです。この標本に出会ったのは、国立感染症研究所を訪問した際でした。初めての訪問の際にこの標本を見せていただいて、「もしや」との思いが浮かんだので、後日、再び訪問した際に、今度は標本をお借りして解剖・観察したんです。
――解剖したんですね。
柳澤:チェンマイの標本についてはすでに、僕の共同研究者である鹿児島大学の坂巻祥孝准教授がほとんど解剖されていました。僕は写真を撮って、既存種と比べました。一方、他の4種については自ら解剖しました。ただ、いずれもそんなにバラバラにはなっていません。尻の部分を少し切るなどして中を見たといった具合です。足を全部外すとかそういうレベルではありません。
――新種発見の論文って、英語で書くんですか?
柳澤:論文自体は、英語だったり日本語だったり、ものによります。ただ、新種を発表する論文は英語で書くことがほとんどです。論文の書き方は主に坂巻先生と法政大学の島野智之教授から習いました。島野先生も共同研究者です。
――論文を書くのって、大変ですか?
柳澤:大変ですね。研究者によっては「論文を書くのが楽しい」という方もいますけど、僕の場合は発見の瞬間が一番楽しくて、そこからテンションは下がっていくので、論文を書いている間は非常につらいです(笑)。