「紀文(のりふみ)って誰」
あるツイッターユーザーが、お弁当の中の「ちくわ」に刻まれた名前を見て、こんな疑問を投げかけた。これに、食品メーカーの紀文食品(東京都中央区)が「わたしです...きぶんと読みます...」と申し訳なさそうに反応。ツイッターで「おもろすぎ」「のりふみ買ってくるわ」と笑いが広がった。
読み間違えられてしまった紀文食品は、どう受け止めているのか。話を聞いた。
「きぶんだよ!!!!!!!!!!!」
ヒロキ(@4912mendy109)さんは2022年2月1日、母親が作ったお弁当の写真を投稿した。ナポリタンや唐揚げなど美味しそうなおかずが並ぶ中で、「紀文」の焼印が刻まれたちくわが気になった。
「弁当に入ってたちくわ なんか文字書いてあるなぁと思ってよく見たら紀文(のりふみ)でした 紀文って誰笑」
これに反応したのが、ちくわやはんぺん、さつま揚げなどの練り物を販売する紀文(きぶん)食品の公式ツイッターだった。
「すみません私です。」
「のりふみ」ではなく「きぶん」――。その後、紀文食品から「わたしです...きぶんと読みます...」と直接返事をもらったヒロキさんは「きぶん了解しました!いつも美味しいちくわをありがとうございます!」と返信した。
ヒロキさんは2日、J-CASTニュースの取材に「紀文食品さんから反応が来た時はちょっと驚きました」としつつ「言葉が優しく、ノリも良くてとてもいい会社だなと思いました!」と振り返る。読み方が「きぶん」とわかったときは「きぶんかぁそうとも読めるなと思いました」と感じたという。
この「読み違い」をきっかけに、ツイッター上では企業公式アカウント同士の大喜利に突入。アース製薬(東京都千代田区)の公式ツイッターが「のりふみ公式さん 今まで読み方間違えててすみませんでした」といじると、紀文食品のツイッターは「きぶんだよ!!!!!!!!!!!」とツッコミを入れていた。
読み間違いから大喜利まで、一連のやり取りを見ていたユーザーからは「おもろすぎ」「のりふみ買ってくるわ」「何か良い紀文(きぶん)!」など多くの反響が寄せられた。
知られざる社名「紀文」のルーツ
「のりふみ」と間違えられてしまった紀文食品の広報担当者は2日、取材に対し、今回のやり取りを通じて正しい読み方が伝わったことに「ありがたいですね」と話す。
紀文食品は山形から上京した商人・保芦邦人氏が1938年に創業した山形屋米店をルーツとする。保芦氏は40年に築地市場場外(当時)に果物店を開くが、この時の屋号が、果物の名産地・和歌山県(紀伊国)からとった「紀国屋果物店」だった。しかし、この屋号では長いとして、名称の短縮を検討する。
「短くするにあたって、当時は社名に『ん』をつけると商売が繁盛する、というジンクスがありました。紀国屋果物店の『紀』と『ん』を上手く繋げて、最終的に『紀文』になりました」(広報担当者)
その後、練り物製造に力を入れ出した紀文。店頭で売る「おでん種」の一つ一つに「紀文」の焼印を押し、社名を伝えた。「バラで売られると、一見しただけではどこの製品かわかりませんでした。名前をつけるということは、品質を保証するという裏返しでもありました」(広報担当者)。パッケージ包装が進んだ現在でも、一部製品に「紀文」の焼印を押している。ヒロキさんが目にしたちくわもその一つだ。
今ではお正月シーズンに放送するCMで「紀文(きぶん)」と、音付きで社名を紹介している。広報担当者は「ぜひ、『きぶん』という音も合わせて覚えていただければと思います」と話した。