「性差別」指摘に対する専門家の見解は...
女性だけに専用スペースを設けることで「女性は運転が苦手」という印象を与えている、との指摘については「一民間事業者がこうしたサービスを実施しただけで、そこまでの議論に発展させる必要はないかと思います。シンプルに『運転が苦手な女性や妊婦さんにも安心してきてほしい』というメッセージだ、と考えれば充分なのではないでしょうか」と話す。
スペースの設置は男性にとって不公平なのではないか、との指摘にはこう見解を示す。
「女性専用駐車スペースが設置されることで、男性側が損なわれる利益はほとんどありません。例えば、駐車場が常にほぼ満杯で、車が停められないという状況なら別ですが、そうした事例はおそらく多くはない。もちろん、男性にも運転が苦手な人はいるかと思います。それでも、女性専用駐車スペースがあることで致命的な被害を受ける人はいないのではないでしょうか」
一方、SNS上で「男性差別だ」と指摘していたユーザーたちの投稿には、女性が優先されることに対する不快感が込められていたのではないか、と瀬地山氏。「おそらく『女性専用』という言葉だけに反応していて、差別の意味を『不快だ!』というレベルでしか、理解できていないのではないでしょうか」と話す。
民間企業が行う女性向けのサービスとしては他に、映画館の鑑賞料金が安くなる「レディースデー」がある。瀬地山氏は、女性専用駐車スペースとの共通点として「男性側が被る不利益の少なさ」をあげる。「映画料金が毎週水曜日だけ500円分、女性の方が安かったとします。仮に男女が一年間、毎週水曜に映画を見たとしても、最終的な差は2万数千円程度にしかなりません。毎週映画に行く男性や毎週水曜にしか映画に行かない女性がそんなにたくさんいるとは到底思えません」
一方、日本の性別による「差別」は、もっと深刻なものだ、と語気を強める。「18年の東京医科大の一般入試で、女子受験者の得点が一律で減点されたという問題がありました。『女の子だから』という理由で上京できない、そもそも大学進学が許されないといった風潮も根強くあります。こうした構造的な差別が、男女間の深刻な学歴格差や賃金格差を生んでいます。そうした問題と、最大でも年間2万数千円しか映画料金に差が出ないという話や、男性が停められない駐車スペースがあるという話を、同じ『差別』という言葉で括るべきではありません。男性が自分の履いている下駄の高さに気がついていないとしか言いようがありません」