「申し訳ありませんでした。コロナ対策とは思いますが、これは行き過ぎです」
兵庫県明石市の泉房穂市長は2022年1月27日、市民から寄せられた意見書をツイッターに投稿した。その内容は、公共施設のストリートピアノに合わせバイオリンを弾いていた男児が、三人の男性に演奏を止められたのを見た、というもの。泉市長は謝罪し、「その男の子が、もう一度演奏してくれることを願っています」とピアノの運用変更を指示したと伝えた。
運用変更にはどんな意図があったのか。J-CASTニュースは泉市長に話を聞いた。
「ちゃんと届くんですね!」「ご時世的にも...」
泉市長は1月27日、自身のもとに寄せられた「市長への意見用紙」の内容を投稿。そこには、同市の公共施設「パピオスあかし」内に設置されたストリートピアノをめぐる出来事が記載されていた。
「ピアノの演奏に合わせて小学生低学年の男の子がバイオリンを弾いていました。通りすがりでしたが、なんともいえない癒される音色でした。一曲も弾くか弾かない時に男性が三人来て中止をさせていました。なんと、合奏は駄目だと言う事で...男の子は勇気をだして、あの場所で弾いていたのに、その気持ちを考えたら、やはり、市長のお耳に入れた方が良いかと思い書かせて頂きました」(原文ママ)
同施設のピアノは昨年12月22日に設置。朝7時~夜10時まで演奏ができる。子どもの合奏が止められる様子を目にした投稿者は「臨機応変に対応できる様に!!マニュアル通りにしか対応出来ない職員さんの教育をお願い致します。折角、楽しみの無い高齢者が癒されていたのに」と市長に要望した。
これに泉市長は「申し訳ありませんでした。コロナ対策とは思いますが、これは行き過ぎです」と謝罪。27日中に市の運用を変更することを指示したとして、「その男の子が、もう一度演奏してくれることを願っています」と伝えた。
泉市長の対応に、ツイッター上では「ちゃんと届くんですね!」「こうした意見箱の使われ方は素晴らしい」「市民ではありませんが、そんな大人がいることで子どもたちは救われます!」と反響が集まった。一方で「どこまで良くてどこからダメなのか難しい判断...」「ご時世的にも(合奏を止めさせた対応は)間違ってないと思う」という意見もあった。
泉市長「あんまり厳格に物事をやりすぎると...」
ストリートピアノの運用を変更した背景には、どんな意図があったのか。J-CASTニュースは1月31日、泉市長に電話で直接話を聞いた。
実はこのピアノには「合奏はお控えください」と注意書きが記載されていた。全国で一般的に、ストリートピアノを使っての合奏を控えるよう呼び掛けられていることに応じたものだ。
ただ、泉市長はこれまでもピアノで合奏が行われるケースを見てきたといい「私は黙って遠くから『あぁ、かわいらしいね』と思って見ていました」と振り返る。今回、合奏を止めた3人が市の職員だったかどうかはわからないとした。
泉市長は今回指示した「運用変更」の内容について、「合奏はお控えください」の注意書きはそのままにしつつも、「個々の事情に応じて柔軟に対応してほしいと呼びかけた」と説明する。
「ピアノの横で静かにバイオリンを弾くくらいは、そこまでうるさくもないでしょうし、バイオリンを黙って弾く分には、コロナがどうのこうのということもない。ケースバイケースだと私は判断しました。指示としては『合唱、大声で歌うのはやめてね』というのと、『音がうるさいとか、周りから苦情が出そうな状況は控えてもらおう』という風に運用してください、と指示しました。あんまり厳格に物事をやりすぎると、かえって『それ、なんのためにやってるかわからん』となってしまいますので」
泉市長の対応が注目を集めた一方、合奏を止めさせた人に対しては「別に非はないやろ」「怒らないでいてあげて欲しい」などと同情の声も寄せられていた。泉市長は、こうした声をどう受け止めたのだろうか。
「『誰かが悪い』とか全く思っていません、おそらく、そこで声をかけられた方も、生真面目に対応なさった方だと思いますし、今回(演奏を止めた人に)同情いただいた方も、私はありがたいと思っていて。その情報がなければ、今回対応できなかったわけですから。意見書でも『市長のお耳に入れたら』と書いていただいたことは非常にうれしい。そういったときにちゃんと対応していることを示さないと、市民から情報をあげていただけませんので」
(3日11時20分追記)2月2日、ストリートピアノに掲示された注意書きは「周りにご配慮いただき、やさしく演奏してください」に変更された。