「釣りという文化をサステナブルに」 海中ゴミ拾いで資源再利用...「マリンスイーパー」が目指す先

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   釣り人が集まる釣り場の海底には、放棄されたルアーや糸が蓄積していく。このゴミが蓄積した海底を、「マリンスイーパー」の名でダイビングして海中の釣りゴミ清掃をする人がツイッターに投稿すると、そのショッキングな映像は大きく拡散された。

   海底の動画を投稿した、静岡の海で海中清掃の活動を続ける「マリンスイーパー」の土井佑太さんに、実情とこれからの展望を聞いた。

  • 根掛かりの糸にひっかかり脚を切断し残り1本になってしまったカニ
    根掛かりの糸にひっかかり脚を切断し残り1本になってしまったカニ
  • エビにも糸が絡みついて傷ついている
    エビにも糸が絡みついて傷ついている
  • 海底に蓄積されたルアー
    海底に蓄積されたルアー
  • 根掛かりの糸にひっかかり脚を切断し残り1本になってしまったカニ
  • エビにも糸が絡みついて傷ついている
  • 海底に蓄積されたルアー

放棄されたルアーと釣り糸

   土井さんは2021年1月18日、釣り糸だらけの海底の様子を撮影してツイッターにアップした。場所は静岡県某所の著名な釣りスポットで、釣りのハイシーズンには1週間で1000人、週末は1日200~300人が訪れる。

   「ゴロタ場」という海底に丸い石が蓄積して豊かな釣り場になっている場所だが、その分釣り人の数も多く、放棄を余儀なくされるルアーと糸が溜まる。

「釣り針が岩など水中の障害物にひっかかり、引き上げられなくなることを根掛かりと言います。工夫して回収できればいいのですが、どうしても取れない場合は釣り糸を切って放棄するしかありません。釣りをやっていると起きてしまうことではあります」

   と、自らも釣り人の土井さんは説明する。根掛かりで放棄された糸がまた別の釣り針を引っ掛けて根掛かりを起こす、の悪循環が起き、漁場にも悪影響を与える。

「根掛かりの糸が海藻に絡みつくと海藻は枯れてしまい育たなくなります。エビやカニにも糸が絡みつくと死んでしまいますし、魚が減って釣れなくなります。『昔は魚が釣れたのに釣れなくなった、という事態が起きる一因でもあり、全国どこの釣り場でも起きることです』」(土井さん)

   これをダイビングで回収、さらにルアーを再利用しているのが土井さんの仕事だ。10年のダイビング歴がある土井さんだが、清掃は3年ほど前から始めた。

「ゴミ拾いに経済的サイクルを持たせる」

   「先輩ダイバーも諦めたほどの量です」とは言うものの、釣り場に潜って根掛かりの回収を続けている。一度ダイビングで潜ると多い時は1回で100本から200本が回収可能で、1日3回の潜水で500本程度は回収できる。「1カ月清掃だけを続ければ何とかなる量ではあります」と話すが、その間にも放棄される根掛かりはある。「2021年には約1万本の根掛かりを回収しました」という量だ。

   根掛かりの回収は釣り場を綺麗にするだけがメリットではなく、ルアーを廉価で再利用できる。回収したルアーに再塗装などをほどこし、自身のネットショップ「Marine Sweeper」で販売している。定価の20~50%ほどのディスカウント率で安価だ。

   この活動を始めるにあたり、土井さんは法律面も調べ挙げた。明治32年制定の水難救護法によれば、第二章「漂流物及沈没品」の項で、水中の漂流物・沈没品は拾得者が市町村に引き渡す責務を負うが、所有者が6カ月以内に現れない場合は拾得者が受け取る権利を有すると定めている。土井さんは海中の清掃にあたって、市町村の了解を得たエリアから実施している。有志と共に実践中の海中の清掃と資源の再利用で釣り産業のサステナブルを目指す。

「釣りという文化をサステナブルなものにしたいと思っていて、ゴミ拾いに経済的サイクルを持たせることがその解決の糸口になると思っています。完全な解決には至らなくとも、今やっている活動がプラットフォームとして仕組化されて軌道に乗れば、もっと成果を上げていけると思います」(土井さん)

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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