兵庫県三田市内の人気洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」は2022年1月21日、長時間労働による労働基準法違反の疑いで書類送検されたことを受け、公式サイトに謝罪文を出した。
読売新聞や神戸新聞などの報道によると、同社は21年1月16日~2月15日の1か月間、従業員11人に対し、労使協定で合意した時間外労働上限の月100時間を超えて働かせるなどした疑いが持たれている。
過労死ラインを超えて月342時間労働もあったとの報道も
伊丹労働基準監督署(兵庫県伊丹市)は22年1月21日、法人としての同社と製造・経営部門の幹部2人を神戸地検に書類送検した。中には、過労死ラインとされる月100時間以上を大幅に超えて月342時間も労働していた従業員もいるという。
同社については、18年1月に同労基署から是正勧告を受けた後、21年1月14日にも再度勧告を受けていた。しかし、同年11月には、「やりがい搾取」が行われ、若いパティシエが次々に辞めていると報じられるなどし、同署では、2度の勧告でも改善せず悪質だと判断して刑事事件として立件したという。
一方、同社は21年12月末、サイト上にお知らせを出し、1月の是正勧告を全面的に受け入れ、専門家の助言で対応を行い、未払い賃金の支払いも終わったなどと同労基署に報告したとしていた。
同社は、オーナーシェフの小山進氏(57)が03年に創業し、フランスのチョコレート品評会で数々の賞を受けており、ロールケーキ「小山ロール」でも知られる。小山氏は、19年には「世界最高峰のチョコ職人100人」に選出された有名パティシエで、テレビ番組などにも多数出演している。
「今後行われる検察の捜査には全面的に協力」
同社サイトの採用情報をみると、小山氏が従業員に接する姿勢が書かれている。
「まず最初に。エスコヤマで働くことはたいへんです」。この言葉で書き出し、その理由として、小山氏は、「なぜかと言うと、ここはスタッフが『仕事を覚える』のではなく『人間を磨く』場だと、シェフの私が考えているからです」と説明した。
小山氏は、「人を感動させる『プロの仕事』」を強調し、パティシエには、作り手の個性が求められると強調している。人間としての素養も磨いてもらうとし、「『そんな掃除で満足しとるんか!』『もっと大きな声で話しなさい!』などと、小姑のように注意もします」という。そして、「入社後は、早い時期から具体的な成長を求められるでしょう。なぜなら私は、あなたに濃厚で有意義な修行の時間を与えたいと思っているのですから」などとつづっている。
長時間労働については、「本日の報道について」と題して、1月21日にサイト上で謝罪文を出した。「本件により、お客様や取引先様、従業員の皆様をはじめとする関係者の皆様方に、多大なるご心配やご迷惑をお掛けしたことを、深くお詫び申し上げます」などとしたほか、「弊社代表の小山が書類送検をされたような一部報道がございましたが、小山は送検されておりません」と伝えている。
そのうえで、次のように報告した。
「現在、書類送検の詳細につきましては把握をしておりませんが、今後行われる検察の捜査には全面的に協力して参ります。また、弊社としましては、今回の事態を厳粛に受け止め、労働環境の改善に向けて、今後も全力で取り組んで参る所存でございますので、引き続きご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)