旅行会社大手JTBが2021年4月、満を持して参入を表明した「バーチャル事業」が、その後何の音沙汰もない。
発表当時、SNS上では仮想空間のクオリティが「初代プレステを思い出させる」などと酷評されたが、開発は進んでいるのか。同社に聞いた。
「みんなで日本を世界を盛り上げましょう!」
JTBは2021年4月7日、グループ会社のFun Japan Communications(FJC)、IT企業「FIXER」と共同で「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業に参入すると発表した。昨今話題の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「メタバース(仮想空間)」に着目した格好で、日本をバーチャル上で再現するという壮大なプロジェクトだ。
利用者は仮想空間で日本を旅することができ、観光、買い物、交流などを楽しめる。自治体や他業種の企業も巻き込み、オンラインで新たな経済圏を作り出す狙いがある。イメージ動画では、自身の分身であるアバターが東京や北海道を歩き回る模様が紹介された。
当初の想定では、FJCが運営する日本紹介メディア「FUN! JAPAN」の会員でアジア地域に住む125万人を対象に4月末から募集を始める。その後、日本を含め対象国や地域を拡大し、2024年までに1000万人の「アクティブな交流人口の創出」を目標としていた。
リリースでは「世界に誇る日本発の交流プラットフォームを確立し、サステイナブルな平和で心豊かな社会の実現に貢献してまいります」と意気込み、PR動画に出演した山北栄二郎社長は「みんなで日本を世界を盛り上げましょう!」と呼びかけていた。
計画通りいかず?続報無し
発表後、評判は芳しくなかった。
バーチャル空間のクオリティをめぐり「プレイステーション1を思い出させる」「よくGOサインが出たな」とSNS上で厳しいコメントが相次ぎ、望まぬ形で話題となった。
JTBは当時、J-CASTニュースの取材に「オンラインゲームのようにグラフィックを極めるのが目的ではなく、コロナ禍で移動が制限される中で、観光地での交流を実感できて、いかにリアルにもつなげるかを考えています」と意に介さず、「全国各地から問い合わせを受けており、地元からの要望を受けて一緒に空間を作り、ブラッシュアップと品質向上を目指したい」と手応えを口にしていた。
取材では4月末に登録を始め、7月以降には日本人も対象にするとの青写真を伝えていた。しかし、現時点でJTB、FJC、FIXERからの続報は見つからない。
JTB広報に2021年1月13日、進捗を尋ねると「開発を進めていますが、今の時点で新たに公表できる内容はございません」と答えた。プラットフォームはいまだ一般公表できていないとする。