「アベック」はいつ「カップル」になった? 朝ドラ登場で話題...識者に聞いた「言葉の変遷」

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   NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」をきっかけに、「アベック」という単語が話題になっている。

   広辞苑(第七版)によると、アベックは「男女、特に恋人同士の二人づれ」。この言葉が劇中で使われたことで、視聴者から「懐かしい」といった声が相次いだのだ。なかには、「アベックって言葉、いつからカップルに変わったんだろ?」との声もあった。

   そこでJ-CASTニュースは、アベックという言葉の変遷などについて、「三省堂国語辞典」の編集委員として知られる日本語学者の飯間浩明氏に話を聞いた。

  • 深津絵里さん(写真:AP/アフロ)
    深津絵里さん(写真:AP/アフロ)
  • 深津絵里さん(写真:AP/アフロ)

「お兄ちゃんとお姉ちゃん、アベックなん?」

   アベックに注目が集まったきっかけは、2022年1月12日の放送だ。この回は1960年代が舞台。その中盤で、主演の深津絵里さん(49)演じる雉真るいは公園で子供たちと野球に興じていた。

   そこに現れたオダギリジョーさん(45)演じる大月錠一郎がるいに歩み寄ると、子供たちからは

「なあなあ、お兄ちゃんとお姉ちゃん、アベックなん?」

   との問いかけがあった。これに対し、るいは「違うよ! お友達!」と否定するも、子供たちは2人を「アーベック! アーベック!」とはやし立てたのだった。

   これを見た視聴者からは「アベックという言葉を聞いて"懐かしい"と思った私はどっぷり昭和生まれの人です、ハイ(笑)」といった声が続々。他にも、「アベックって言葉、いつからカップルに変わったんだろ?」と、「アベック」という単語が「カップル」に置き換わっていることに気付いたとする声も上がっている。

   確かに、以前は「名古屋アベック殺人事件」(1988年・昭和63年発生)といった、事件名にすら使われるほど一般的だった「アベック」も、今ではほとんど目や耳にしなくなった印象だ。ネット上でも、すっかり死語という扱いである。

三省堂国語辞典では「古い言葉」と紹介

   アベックという言葉について飯間氏は、視聴者の反応の通り、現在はほとんど使われなくなっており、「カップル」に取って代わられた言葉だと説明した。

「『アベック』はフランス語の『avec』(「一緒に」の意味)という単語が語源ですが、現在ではほとんど使われなくなりました。『三省堂国語辞典』第8版の「アベック」の項目では「2〔古風〕男女のふたりづれ。カップル」と、古風な言葉としています。「アベック」は戦前から戦後にかけてよく使われましたが、1990年代にはかなり古く感じられ、『カップル』が主流になりました。ちなみに、『カップル』も戦前から使われてはいました」

   また、その置き換わった時期について飯間氏は、

「先程の説明と重なりますが、非常にざっくり言って1980~90年代といったところでしょう。出久根達郎の短編『紐』(1997年)には『アベックさ。古い? カップルと今は言うのかい』というくだりがあるほか、2010年には朝日新聞が、『アベックはもういない?』とのタイトルで記事を発表しています。同記事では『アベック』について、『1990年代からは徐々に姿を見せなくなる』と解説しています」

   また、ドラマの放送を受け、ツイッター上では

「ナウなヤングのアベックが#カムカム」
「ほな、君ら、アベックなん? 10周まわって逆にナウいな、、#カムカムエヴリバディ」

   といった、やはり、死語と思しき単語を交えたツイートも見られた。そこで、編集部はこのような例についても飯間氏に聞いてみた。

「『アベック』と『ナウ(い)』は、盛んに使われた時代が違います。『ナウな感覚』は1970年代からの用法、特に『ナウい』は79年から80年代にかけてよく使われた言葉です。70~80年代にも「アベック」は生き残っていたので、『ナウいアベック』と言えなかったわけではありませんが、やはり、『アベック』は70年代以前の感じのする言葉です」

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)

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