高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
1部上場8割が最上位「プライム」へ... 東証再編のポイントは?

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   東京証券取引所は2022年1月11日、4月4日に実施する株式市場再編後の全上場企業の所属先を公表し、実質最上位のプライムには1841社が上場することになった。東証1部のうち8割強が移行し、プライム以外に移る企業は2割弱に留まった。

   上場基準を厳しくして、新陳代謝を促す狙いがあると言われているが、その本質は会社の組織変更と同じと筆者は見ている。

  • 東京証券取引所
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再編までの経緯

   経緯を辿って見よう。昔は東証には1部と2部があり、1部が上で、2部がその2軍だった。他にもジャスダック、ヘラクレスとマザーズがあって、こちらはベンチャー企業用。

   ジャスダックは、1960年代からもともと日本証券業協会という、取引所でない全然違うところがやっていたが、2004年に取引所に変わった。

   ヘラクレスは1999年に前身が設立され2000年から大阪証券取引所がやっていて、マザーズは1999年から東京証券取引所がやっていた。

   ジャスダックは2008年に大阪証券取引所に吸収され、その大阪証券取引所の現物市場も2013年に東京証券取引所の傘下となった。この結果、ジャスダック、ヘラクレス、マザーズのベンチャー企業用市場は東京証券取引所の下となった。とともに、東京証券取引所には従来の東証1部、東証2部も混在することとなった。

   その後、紆余曲折を経て、今回の再編になった。

   東証1部の大部分はプライム、一部の東証1部、東証2部、旧ジャスダック、旧ヘラクレス・旧マザーズの一部はスタンダード、旧ヘラクレス・旧マザーズの一部はグロースと概ねなっている。大雑把に言えば、1軍、2軍、3軍だ。

どこに分類されているかは重要でない

   その入れ替えは面白いのだけれど、それで株価が上がるわけでもないのだから、日本経済とはあまり関係ないだろう。そもそも、投資家も企業ごとに見ているのだから、それがどこに分類されているかは重要なことではなく、3軍から1軍へ上がる企業を見つけるのがポイントだ。

   むしろ、日本企業の時価総額世界ランクで情けない現実のほうが注目していい。アップルは一時、世界で初めて3兆ドル(約345兆円)を超えたが、東証のすべての市場の時価総額は昨年12月で753兆円なので、アップル1社で東証の半分程度だ。

   日本トップのトヨタ自動車の時価総額世界ランクは29位の0.32兆ドル(約37兆円)。かつて30年以上前のバブル崩壊前には、世界のトップ10に日本の金融機関が入っていたのが懐かしい。今のトップ10は、米巨大IT企業で、金融機関ではない。

   これを見て、この30年間日本で成長企業が出なかったので、マクロ経済成長できなかったと見る人もいる。しかし、筆者の見立てはその逆で、その間、人為的に作れるマネー量不足(世界でワースト1)で、企業の成長機会がなく停滞したとみている。つまり、マクロ経済要因が原因で、結果として企業でみても時価総額が大きくならなかったというわけだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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