北朝鮮「極超音速」弾道ミサイルの正体 3か月で大幅改良、脅威高まる

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   北朝鮮が2022年1月5日朝に発射した弾道ミサイルのような物体について、北朝鮮の国営メディアは1月6日朝、「極超音速ミサイルの試射を行った」と報じた。北朝鮮が極超音速ミサイルの発射を主張するのは、21年9月28日に発射した「火星8」型以来、2回目。

   このミサイルは、米国、ロシア、中国などが開発を進めている。従来の弾道ミサイルと比べて飛行高度が低く、速度が速いため、迎撃が困難だとされることから「ゲームチェンジャー」とも呼ばれる。今回発射されたミサイルは、3か月前よりも速度が速くなっているとの分析もあり、周辺国への脅威が増すことになりそうだ。

  • 北朝鮮が新たに発射したミサイル。新型の「極超音速ミサイル」だとみられる(写真は労働新聞から)
    北朝鮮が新たに発射したミサイル。新型の「極超音速ミサイル」だとみられる(写真は労働新聞から)
  • 北朝鮮が2021年9月に発射した「火星8」型。韓国は「開発初期段階」だと評価していた(写真は労働新聞から)
    北朝鮮が2021年9月に発射した「火星8」型。韓国は「開発初期段階」だと評価していた(写真は労働新聞から)
  • 北朝鮮が新たに発射したミサイル。新型の「極超音速ミサイル」だとみられる(写真は労働新聞から)
  • 北朝鮮が2021年9月に発射した「火星8」型。韓国は「開発初期段階」だと評価していた(写真は労働新聞から)

「開発初期段階」だと評価されていた「火星8」

   「火星8」発射時の北朝鮮側の報道では、「試験の結果、目的の全ての技術的指標が設計上の要求に満足した」だとして、発射は成功だとの見方を示していたが、韓国側は否定的な見方をしていた。聯合ニュースによると、速度が音速の5倍を指すマッハ5以上の場合に極超音速ミサイルと評価するが、米韓の情報当局が検知した火星8の速度はマッハ3程度だったとして、「開発初期段階」だと評価。韓国軍の合同参謀本部は「探知及び迎撃が可能な水準で評価している」と報じていた。飛行距離は約200キロだとみられている。

   今回のミサイルは、700キロ飛行して「標的に誤差なく命中」したと北朝鮮側は主張。聯合ニュースによると、韓国軍は速度を「マッハ5以上」だと推定している。米韓が定義する極超音速ミサイルの要件を満たしていることになる。韓国メディアは飛行距離や高度について言及していないが、日本側はそれぞれ「通常の弾道軌道だとすれば約500キロ」、「通常の弾道ミサイルよりも低い、最高高度約50キロ程度」だと推定している。

液体燃料を事前に容器に詰める「アンプル化」で準備時間を短縮

 

   それ以外にも、「火星8」では

「初めて取り入れたアンプル化されたミサイル燃料系統とエンジンの安定性を実証した」

と主張したのに対して、今回は

「冬季の気候条件の下での燃料アンプル化系統に対する信頼性も検証した」

としている。「アンプル化」は、液体燃料を事前に容器に詰め、発射するたびに容器をミサイルにはめ込む方式を指すとみられる。この場合、従来の液体燃料を直接ミサイルに注入する方式に比べて、発射までの準備時間を短縮することができる。

   さらに、今回の報道では、

「分離した極超音速滑空飛行戦闘部に新しく導入された側面機動技術の遂行能力を評価した」
「初期発射方位角から目標方位角へ120キロメートルを側面機動して700キロメートルに設定された標的に誤差なく命中した」

といった具合に、水平方向に移動することを指す「側面機動」という単語も登場。操縦性も向上したとみられる。

   国営メディアが配信した「火星8」と今回のミサイルの写真を見比べると、弾頭部分や翼の部分の形が若干異なっており、極超音速ミサイルの中でも新型が開発された可能性がある。

   松野博一官房長官は1月6日午前の記者会見で、

「これまで北朝鮮により発射されたことのない、新型弾道ミサイルであると考えている」

としている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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