北朝鮮が2022年1月5日朝、弾道ミサイルとみられる飛翔体を日本海に向けて発射した。北朝鮮によるミサイル発射は、21年10月19日の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射以来、2か月半ぶり。
北朝鮮はコロナ禍にともなう国境閉鎖で食糧事情が悪化。12月27日から31日にかけて開かれた朝鮮労働党中央委第8期第4回総会では、「食糧問題を完全に解決」することが必要だとされた。一方で、国家防衛力の強化や新型兵器開発の重要性も強調されており、この方針に沿って発射が繰り返されている可能性もある。
岸防衛相「目的がミサイル技術の向上にあることは明らか」
ミサイル発射は日韓の防衛当局が発表。ただ、両国で内容が微妙に異なっている。日本側の発表では、「弾道ミサイルの可能性があるもの」が8時7分頃、北朝鮮の「内陸部」から東方向に発射された。飛行距離は「通常の弾道軌道だとすれば」という条件付きで、「約500キロ」だとされた。岸信夫防衛相は、変則軌道の可能性や高度については「分析中」だと話した。
韓国側の発表では、「弾道ミサイルのようなもの」が8時10分、北朝鮮北部で、中国と国境を接する慈江(チャガン)道から東方向に発射されたとしている。北朝鮮が21年9月に初めて発射した極超音速ミサイル「火星8」型も慈江道から発射されたとみられている。
岸防衛相は1月5日午前、北朝鮮は19年5月以降、約40発のミサイル発射を繰り返しているとして、「その目的がミサイル技術の向上にあることは明らか」だと指摘した。
1月5日夕時点で北朝鮮メディアは今回の発射について言及していない。ただ、軌道が現時点でははっきりしないことや、韓国側が指摘している発射場所を踏まえると、新型の「火星8」型の改良を進めている可能性もありそうだ。
「核武力完成」シンボルを2021年末に賞賛する意味
年末年始にかけて、北朝鮮では新型兵器の重要性を強調する論調が相次ぐ。朝鮮労働党機関紙の労働新聞は21年12月20日に掲載した記事で、金正恩総書記が最高指導者としての10年間で行ってきた業績を列挙。その中で、17年11月に発射成功を主張した新型弾道ミサイル「火星15」型について、
「5000年を飛び越え、偉大な金正恩朝鮮が世界の上に打ち上がった」
などと表現した。
当時の声明では、米国本土全域が攻撃可能だと主張し、「国の核武力完成」を宣言していた。18年4月には、核開発と経済建設を両立させる「並進路線」を終了し、経済成長に重点を置くことを決定していた。ただ、「核武力完成」のシンボルでもある「火星15」の意義を改めて強調したことで、核開発を重視する路線に戻りつつある可能性もある。
21年末に正恩氏も出席して開かれた朝鮮労働党中央委第8期第4回総会では、
「国防工業部門で正確な発展計画に従って先端兵器システムを連続開発しながら、われわれの軍事力の先進性と近代性を大いに誇示したのは、今年の成果でたいへん重要な位置を占める」
などと新型兵器開発の重要性に言及しながら、軍備増強についても
「日ごとに不安定になっている朝鮮半島の軍事的環境と国際情勢の流れは、国家防衛力の強化を片時も緩めることなくいっそう力強く推し進めることを求めている」
と主張している。
一方で、
「農業生産を増大させて国の食糧問題を完全に解決することを農村発展戦略の基本課題に規定」
するともうたう。北朝鮮としては、全く異なる種類の課題に同時に向き合っていることになる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)