「核武力完成」シンボルを2021年末に賞賛する意味
年末年始にかけて、北朝鮮では新型兵器の重要性を強調する論調が相次ぐ。朝鮮労働党機関紙の労働新聞は21年12月20日に掲載した記事で、金正恩総書記が最高指導者としての10年間で行ってきた業績を列挙。その中で、17年11月に発射成功を主張した新型弾道ミサイル「火星15」型について、
「5000年を飛び越え、偉大な金正恩朝鮮が世界の上に打ち上がった」
などと表現した。
当時の声明では、米国本土全域が攻撃可能だと主張し、「国の核武力完成」を宣言していた。18年4月には、核開発と経済建設を両立させる「並進路線」を終了し、経済成長に重点を置くことを決定していた。ただ、「核武力完成」のシンボルでもある「火星15」の意義を改めて強調したことで、核開発を重視する路線に戻りつつある可能性もある。
21年末に正恩氏も出席して開かれた朝鮮労働党中央委第8期第4回総会では、
「国防工業部門で正確な発展計画に従って先端兵器システムを連続開発しながら、われわれの軍事力の先進性と近代性を大いに誇示したのは、今年の成果でたいへん重要な位置を占める」
などと新型兵器開発の重要性に言及しながら、軍備増強についても
「日ごとに不安定になっている朝鮮半島の軍事的環境と国際情勢の流れは、国家防衛力の強化を片時も緩めることなくいっそう力強く推し進めることを求めている」
と主張している。
一方で、
「農業生産を増大させて国の食糧問題を完全に解決することを農村発展戦略の基本課題に規定」
するともうたう。北朝鮮としては、全く異なる種類の課題に同時に向き合っていることになる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)