JR北海道の釧網本線と石北本線では、2022年1月から2月にかけて往年のゲーム「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」とのコラボ企画を展開する。
「オホーツクに消ゆ」は1980年代にヒットしたレトロゲームだが、北海道を舞台にしたこのゲームを、流氷観光の名所を走る路線の集客につなげようという取組が21年に始まり、2年目にはコラボ線区が拡大している。
40~50代のゲームファンがターゲット
釧網本線(東釧路~網走)は釧路側で釧路湿原を望み網走側でオホーツク海沿岸を走行し、流氷が望める駅として知られる北浜駅などの名所を持つ。冬季には観光列車「流氷物語号」が1月下旬~2月にかけて運転されている(網走~知床斜里)。
観光資源は豊富ながら路線の存廃問題が浮上している同線をさらにピンチに追い込んだのが新型コロナ。外国人観光客を失った釧網本線で21年冬からゲーム「オホーツクに消ゆ」とのコラボが始まった。流氷物語号に「オホーツクに消ゆ」の描き下ろしヘッドマークが掲示され、コラボグッズも販売が始まった。
そもそものきっかけは釧網本線の活性化にも携わっている団体・MOTレール倶楽部会長の石黒明さんが20年3月17日の北海道新聞朝刊に寄せたコラム「朝の食卓」で「オホーツクに消ゆ」と道東エリアのコラボ企画ができないかと記したことだった。
「『オホーツクに消ゆ』は、ひがし北海道の広域観光の展開に効果的な素材である。名作のリバイバルへ向けて、どなたか力を貸してほしい」とつづったこのコラムが拡散されると、鉄道ライターの杉山淳一さん経由でゲーム原作者の堀井雄二さんらに企画が持ち込まれ、関係者の了解を得て実現に至った。
パソコン版が1984年、ファミコン版が87年に発売された「オホーツクに消ゆ」は石黒さんら当時を知る世代には思い出深い作品だった。石黒さんが取材に語る。
「主人公がミステリーを追いかける『オホーツクに消ゆ』ですが、北海道特に道東にゆかりの場所が多く、今私が住んでいる網走市内やその周辺にも聖地が点在しています。MOTレール倶楽部は流氷物語号でボランティア活動をしてきましたが、観光客が減ったこの折にゲームを知る40~50代向けにできないかと考えました。おかげでこのファミコン世代の皆さんには現地にも多くの方に来ていただきました。
当時にはなかった聖地巡礼という文化が生まれたおかげで今こうして企画も実現できたと思いますが、今ヒットしている作品ではなく昔のゲームを出してきたところがこの企画のユニークなところですね」(石黒さん)
21年2月には「オホーツクに消ゆ」原作者の堀井雄二さんと一緒に現地を旅するツアーも実現し、ゲームファンの熱気が実を結んでいる。
復刻マークで鉄道ファンも来るか
2年目の22年冬には釧網本線の流氷物語号で引き続きコラボが続くのに加えて、札幌と網走を結ぶ石北本線の特急「オホーツク」でヘッドマークがゲームリリース当時のデザインに復刻される。「オホーツク(OKHOTSK)」の「OK」のデザインから、1992年まで使われたオホーツク海の流氷を描いたヘッドマークになる。
「当時の『オホーツク』の列車はゲームの画面に登場しますし、『オホーツク』のヘッドマークもゲームのタイトルバックに似ているんです。札幌から網走への都市間輸送を担う列車ですから、JRとしても列車で網走に来ていただき、テコ入れをしたいとなって、まだ残っている当時の車両でのリバイバルにつながりました」(石黒さん)
また本コラボとは別にJR北海道の「いまこそ輝け!北のキハ183系」キャンペーンによりオホーツク運用に就くキハ183系車両のうち2両が登場時の塗装に戻される。キハ183系はJR北海道最古の特急型で、乗車できるのは石北本線の特急「オホーツク」「大雪」のみで、鉄道ファンをも惹きつけそうな企画が2つ重なった。ヘッドマーク復刻は21年1月29日から始まる。
釧網本線・石北本線ともにJR北海道からは「単独維持が困難な線区」に指定され、沿線自治体による補助や活性化策がなされている。コロナの影響で「釧網線では外国人客がいなくなり6~7割ほど乗客が減少しました」(石黒さん)というピンチだが、レトロゲームとのコラボで打開を狙う。