「迫力があれば選挙に勝てたんですか?」 立憲・泉代表が「提案型」にこだわる理由【インタビュー】

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   立憲民主党の泉健太代表が2021年12月28日にJ-CASTニュースのインタビューに応じ、自らが掲げる「政策立案型」「提案型」路線の意義を語った。

   党代表として初めて臨んだ臨時国会では、岸田文雄首相は「聞く力」を掲げた。泉氏は「表面上はいくつか変わっていたところがある」と一定の評価をする一方で、「赤木ファイル」や文書交通費をめぐる問題では、「本質的な問題に入ると、いまだに『聞かない力』の方が強い」とも指摘した。

   「提案型」の成果のひとつとして挙げたのが、政府が18歳以下への10万円相当の給付のうち、5万円をクーポン券で配ろうとしていた問題だ。野党の指摘で現金一括給付に方向転換したとして、「発議・発案をした野党の役割の大きさを知ってほしい」と訴えた。

   ただ、これまでの批判先行型に比べて「迫力不足」「パンチ力を感じない」といった指摘もつきまとう。泉氏は「じゃあ、迫力を出してパンチを繰り出せば選挙に勝てたんですか?」と反論し、批判先行型は必ずしも支持に結びつかないとの見方を示した。一方で、「監視力が高いからこそ、問題点を明確にすることができて、提案ができる」とも。提案力と行政監視能力を両立させていきたい考えだ。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)

  • J-CASTニュースの取材に応じる立憲民主党の泉健太代表。「政策立案型」の意義を強調した
    J-CASTニュースの取材に応じる立憲民主党の泉健太代表。「政策立案型」の意義を強調した
  • J-CASTニュースの取材に応じる立憲民主党の泉健太代表。「政策立案型」の意義を強調した

「聞く力」は「多少発揮された部分もありますが...」

―― 代表として初めて臨んだ臨時国会でした。これまでは「話を聞かない」「話が噛み合わない」ことが多かった政権側ですが、岸田首相は「聞く力」を掲げています。聞いたことと聞かなかったことの両方があったと思いますが、いかがですか。やりづらくはありませんでしたか。

泉: 今回の総選挙は自民党、立憲民主党がともに議席を減らすという選挙でした。ですので、自民も立憲も、その結果を踏まえて方針を転換するという臨時国会だったと思います。自民も、これまでの強権的な政治から「聞く力」に転換し、我々も批判・追及というところから「政策立案型」に転換した、ということだったと思います。「聞く力」はどうだったかと言うと、多少発揮された部分もありますが、やはり本質的な問題に入ると、いまだに「聞かない力」の方が強いと認識しています。例えば、「赤木ファイル」問題の認諾という行為(編注:自殺した財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻・雅子さんは、真相解明のために国などを相手取って損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしたが、国側は赤木さん側の請求を受け入れる『認諾』を表明し、訴訟は終結した)です。多くの国民が疑問を抱き、真相究明から遠のく認諾という行為に踏み切ったというのは、全く「聞く力」とは言えません。国土交通省のデータ書き換え問題では、確かに第三者委員会を作るという動きはありました。ですが、例えば文書通信費の問題で「聞く力」があるのかといえば...。立憲民主党が出した法案に野党各党も賛同をする中で、3点セット(日割、返納、使途公開)の実現が多くの国民の声であるにもかかわらず、自民党だけがそこに抵抗し、その総裁である岸田総裁はリーダーシップを発揮しようとしない。これでは「聞く力」を発揮したとは言えません。対中人権決議もそうです。野党各党は(党内)手続きを終えているが自民党は終えていないとか...。

「現金一括給付」実現は野党の指摘があったから

―― 結構「聞いていない」ところがありますね。

泉: 「聞く力」について言えば、表面上はいくつか変わっていたところがありますが、それで課題が解決したとは言えません。一方で立憲民主党の「政策立案型」というのは、何も追及や批判をやめるということではなく、あくまで本来の立憲民主党の良さ、長所を発揮していこうということです。今回、代表質問で17の提案をさせていただきました。例えば、クーポン券の問題です。まず事務費の無駄を指摘して、その後の国会論戦の中で、最終的に現金一括給付への方針転換を実現することができました。総理の「聞く力」に対する評価だけではなく、ぜひ発議・発案をした野党の役割の大きさを、ぜひ知っていただきたいと思っています。もし野党が、立憲民主党が、このクーポンの問題を指摘しなかったときに、政府は現金一括給付を自ら選択したのでしょうか。決してそんなことはありません。議席の差はかなり大きい。法案を与党が出してくれば、とても阻止することは難しい環境の中で、立憲民主党が提案したことによって、政府の方針が変わるのであれば、やはり野党の力、立憲民主党の役割が大きいのだということを、ぜひ国民の皆様には知っていただければと思います。

―― 課題を感じたことはありますか。審議時間が足らないとか...。

泉: 我々は21年6月に通常国会が終わってから、すぐに補正予算を組むべきだと言ってきたので、12月に臨時国会がようやく開かれることそのものが、国会軽視、国民軽視だと思っています。今もオミクロン株が出てくる中で、国家的危機の状況において、国会が閉会している意味があるのか、ということは根本的に問わなければいけない話です。こういう危機的状況のときには、国会は継続開会をしていって良いと思います。

―― 22年1月には通常国会が召集されます。

泉: 例年我々が確保する質疑時間がある中で、政府・与党の側から新たな疑惑や問題点が出てくると、すでに持っている時間を、その疑惑の追及に割かなければいけなくなります。本来は、新たに疑惑や不祥事が出てくるのであれば、別に質疑時間を確保されて当然の話です。一定の時間内で疑惑追及の時間が増えれば増えるほど、立憲民主党としては、独自の党の政策、考え方を訴える機会が減ってしまうことになるので、そういったジレンマを抱えているというところはありますね。

―― 「政策立案型」についていえば、臨時国会で「補正予算案に対する組み替え案」を提出していました。そこでは「不要な予算」のひとつとして「マイナポイント第2弾=1兆8134億円」の削除を求めていました。1.8兆円に割高感があるのは確かですが、マイナンバーカードの普及率を上げる必要があるのも事実です。何か別のやり方を考える必要がありますね。

泉: 特典を与えて普及率を上げるというのは一つの手法ではありますが、根本ではない気がします。マイナンバーカードの安全性や利便性、こういったところにおける信頼感が低いところに問題があるし、使いにくさの問題もあります。例えば自宅で使う場合にカードリーダーが未だに必要だとか、スマホでも使えるものと使えないものがあるだとか...。使用時におけるメリットの少なさと利便性、こういうものが根本的な問題だと思います。本人認証のあり方などの解決をした方が、普及率は自然と上がっていくのではないかと思います。
本質的な方に目を向けるべきであって、カードそのものの利便性などが低い状況で、「特典をつければ何とかなる」ということは、本質的な解決にはならないのではないかと思いますね。巨額な予算でありますし、その(普及に携わる)方々だけに恩恵が届くというものですからね。

衆院選では「どの政策が立憲民主党の政策か伝わりにくかった」

―― 12月23日放送の「くにまるジャパン 極」(文化放送)では、過去の反省として「自民党とのファイティングポーズばかり伝わってしまっていて、やはり自社製品を売りきれなかった気がしている。そういった意味で、他社の製品を攻撃するというところばかりが目立ってしまった」と話していたのが興味深かったです。年明けの通常国会にかけて、どういった「自社製品」を売り込んでいきたいですか。

泉: 当然、前回(21年10月の衆院選)の「政権政策」(公約集)の中にも自社製品はいっぱいあってですね...。立憲民主党は「政権政策」という重点項目をまとめた16ページの冊子以外にも、165ページにも及ぶ政策集を用意しています。自民党の場合は20数ページしか分量がありません。立憲民主党は、そういった意味では相当政策に厚みがある政党なのですが、そういったものがほとんど伝わってない、ということだったと思います。特に、私が新体制で発足させた調査会では、外交・安全保障、経済、環境、エネルギー、教育、そして社会保障、この6分野について立憲民主党の考え方を伝えていきたい。例えば教育であれば、当然教育の無償化をしっかり掲げていきます。それぞれの分野において旗を掲げつつ、具体的な政策を展開して浸透を図っていく必要があります。
前回の総選挙のひとつの反省点というのは、野党の共同共通政策と言われる市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)の政策もあり、そして立憲民主党独自の政策もあり、どの政策が立憲民主党の政策かということが、なかなか伝わりにくかったのではないかと思っています。改めて立憲民主党はどういう政策を訴えているのかを、きちんと伝えていきたいと思いますね。

―― 特に力を入れていきたい「一押し」の分野はありますか。

泉: もちろん経済においては、富の偏在が今起きているという状況の中で、どのようにして国民の皆様が果実を得られる制度、税制を作っていくか。こういうことも大事だと思いますね。

「迫力不足」指摘をどう受け止めるか

―― 政策を提案していくことは生産的で前向きなことです。一方で、12月17日の記者会見では「『迫力不足なんじゃないか』という評価もあった」という質問が出ました。12月26日に小川淳也政調会長と太栄志衆院議員が神奈川県大和市で開いた「青空対話集会」でも、聴衆から「強いパンチ力を全然感じない」という声が出ていました。

泉: じゃあ、迫力を出してパンチを繰り出せば選挙(21年10月の衆院選)に勝てたんですか?ということは、まずひとつ。とはいえ、迫力やパンチというのは、全ての議員の国会での質問力という話だと思いますので、そこを落とす必要は全くありません。ぜひ鋭く、パンチ力や迫力をもって核心に迫る質問は、党所属全ての議員にしていただきたいです。ただ、それがいわゆる政府与党を攻撃するためのものなのか、国民の皆様に向けての誠実な質問なのか、というところが問われていると思いますね。

―― そんな中で驚いたのが、蓮舫・前代表代行が12月20日に「対案路線はかつて私も主導しました」とツイートしていたことです。非常に強い言葉で追及する印象があるのですが...。

泉: いやいや、そんなことないですよ??

―― 政策の提案をする一方で、行政監視も重要です。先ほど出てきたような国会質疑時間をはじめとする制約があるなかで、どのようにして両立していきますか。

泉: 両立は可能です。監視や追及があるから提案もできる。監視力が高いからこそ、問題点を明確にすることができて、提案ができるわけです。ただ、例えば大臣の不祥事や、政治資金絡みの問題は、どうしても押し問答にならざるを得ないところはあります。多くの国民の皆様に知っていただきたいのは、野党が少数の中で追及して、あるいは真相を究明しようと努力をする中で、真相が究明に至らなかったり押し問答が続いたりする時に「悪いのはどちらなのか」ということです。少数の側から追及をする力が不足しているとか足りているという話ではなくて、そもそも説明責任を果たしていない側に根本的に問題があります。真相が解明されるかされないかは、あくまで与党、疑惑を起こした側の責任であるということは理解していただきたいです。例えば安倍(晋三)元首相のように繰り返し国会で嘘をついている場合には、もう本当に押し問答が延々と続いてしまいます。そのことに対して野党を批判されてしまうと、野党としてはもう何もできなくなってしまいます。そこはやはり批判は与党、(疑惑を)起こした側に向かうべきだと思います。

―― そこで、良い追及の方法を考えていく必要があるわけですが、泉代表は野党合同ヒアリングの見直しを表明しています。各党がクローズドな形で省庁からヒアリングをした方が、深い話が聞けるとお考えでしょうか。

泉: ヒアリングは、政府の側、例えば答弁に来る役所の担当者の方も、そんなに公開されているか否かで分けて考えているわけではありませんし、答えにそんなに違いが出てくるわけではありません。ただ、あり得るとすれば、むしろ公開されていないときの方が、より本音を出してくる可能性は高いのかなと思います。もちろん公開することの良さも、しないことの良さもあるわけですが、野党合同ヒアリングはまだ数年間の歴史ですので、過去のヒアリングのあり方も踏まえて、今改善をしているところです。(現行の)全面公開の中では、なかなか役人たちが例えば真相に触れようとしなかったり、その(疑惑の)テーマに直接的に当事者として関わったわけではない、担当者の役人が追及にさらされたりすることについての疑問も数多く寄せられています。疑惑や不祥事に対して野党ヒアリングを行うという場合には、担当者にプレッシャーを与えるということではなく、本来的には当事者が説明責任を果たすべきです。このことを前提にして、今は立憲民主党の中で監視力・追及力を落とさずにヒアリングを行っている、ということです。

物理的抵抗は「今の時代にはそぐわない」

―― 過去に野党は、ピケ、牛歩、フィリバスター、プラカードを議場に持ち込んでのアピールなど、さまざまな抵抗戦術を駆使してきました。こういった戦術は続けていきますか。

泉: 私も初当選のときに一度、本会議場で牛歩的な場面に立ち会ったことがありました。当時も「もうこれは今の時代にはそぐわない」という声が多くありました。国会もどんどん可視化されていくし、SNSも発達する中で、国民の皆様が受け入れる抵抗戦術と、もはや受け入れない抵抗戦術は、時代によって当然変わっていくわけです。そういった意味では、過去の抵抗戦術が今も国民の共感を得られるとは思わない方が良い、ということだと思います。

―― 役割をある程度終えた、ということですね。

泉: もちろん時代時代によって変化するものだと思いますが、今は少なくとも、いわゆる物理的抵抗によって共感を得られるという時代ではないと思いますね。

―― 立憲は17年の結党以来、事実上「枝野商店」が続き、今回が初めての「店主交代」です。ですが、代表就任後に行われた直近の世論調査(12月18~19日)で、政党支持率が上がりません。この原因をどうみますか。朝日新聞の調査では、「立憲への期待感を聞いたところ『期待する』は40%で『期待しない』は43%だった」という結果でした。年代別では、18~29歳では「期待する」47%に対して「期待しない」33%で、「期待する」が「期待しない」を大幅に上回っていました。12月21日には、この結果について「これはかなり嬉しいです!」とツイートしていました。

泉: そのひとつの(党の顔が変わるという)変化さえすれば支持率が上がるとか、立憲民主党が提案型に変わることだけで支持率がどんどん上がっていくという状況ではないのかな、と僕は思っています。選挙協力のあり方や地域基盤の強化の仕方だとか、様々な他の要因があって信頼感が重なったときに支持率に反映されるのであって、今はそのうちの、ひとつの「提案型」ということの切り替え、変化ができたということですね。もちろん、例えば執行役員の半分を女性にしたといったこともひとつの変化ですが、何かひとつやれば、ぼーんと支持率が上がるということではないと思っています。変化を続けていき、信頼を得ていく、ということです。その意味で、若い世代で期待が上回っているというのは本当に立憲民主党の変化の兆しを感じているので、非常に嬉しく感じています。この路線に間違いはないと思いますね。

―― 先に「政策提案型」を打ち出していた国民民主党は衆院選で議席を増やし、支持率も少し上がりました。どのように差別化していきますか。引き続き合流を呼びかけていきますか。

泉: 国民民主さんも、私は決して楽観した状況、認識ではないと思っています。非常に厳しい党勢で、特に19年の参院選に比べると100万票近く票を減らしています(編注:国民民主の比例票は19年参院選で348万1078.4票だったのに対して、21年衆院選では259万3396.241票だった。旧・国民民主は20年9月に解党し、その多くが新・立憲民主に合流。玉木雄一郎代表ら一部の議員が改めて新・国民民主を結成した)。国民民主さんも、やはり提案型だけで支持が伸びるという環境ではない、ということは認識しているのではないかと思います。ですから、そういった意味での、いわゆる「旧民主勢力」が改めて声をひとつにしていくということが大事ではないかと思いますし、統合糾合していく中で、より提案型の姿勢というものを国民の皆様に伝えていくことで、徐々に理解も得られていくのではないかと思います。

「自民党の動きについてコメントをしていく政治ではなく...」

―― 先ほどの若者向け政策の議論に少し戻りますが、若者向けには、特にどんな「自社製品」を一押ししていきたいですか。教育無償化の分野ですか。

泉: (若者向け政策は)今までの立憲民主党が訴えていなかったかと言えばそうではなく、訴えていたんですよ。でも、それが届いていなかったという話だと思います。政策の発信の仕方、発信力を強化していきたいと考えています。自民党の動きについてコメントをしていく政治ではなく、立憲民主党の動き、政策を発信する。そういうところに力点を置いていかなければいけないと思いますね。

―― 22年夏には、代表として初めて迎える国政選挙、参院選があります。共産党をはじめとする野党との協力関係について、代表就任直後の11月30日の記者会見では「『単に継続』ということではなく、やはりまずは『どの党がどうだ』ということ以上に、党としてしっかりと総括をせねばならないと思っている」と話していました。現時点での「総括」の状況を教えてください。

泉: 新体制で総括をしてくれ、ということで旧体制から引き継ぎがありましたので、まさに12月に、その総括作業をしているところです。実際には年明けの総括結果になるだろうと想定しています。

―― 共産党との政策合意については「現時点で何かが存在しているというものではない」とする一方で、「枝野(前)代表にもお伺いしてみたいと思いますけれど...」とも話していました。改めて、現時点での認識をお聞かせください。

泉: 「現時点で何かが存在しているというものではない」ということについては、党内、党執行部全体で、そういう認識を持っています。

泉健太さん プロフィール
いずみ・けんた 衆院議員、立憲民主党代表。1974年北海道生まれ。98年立命館大学法学部卒。参院議員秘書を経て、2000年に衆院選に挑戦するも惜敗。03年に29歳で初当選を遂げ、以降8期連続当選。09年、内閣府大臣政務官に就任し、少子化対策、男女共同参画、防災などを担当。党の政務調査会長などを歴任し、21年より党代表。家族は妻と子ども3人。趣味は料理、DIY、自転車、アウトドアなど。

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