実はレトロじゃなかった可能性も...幻の「平成〇〇」
意外にも寛容な姿勢を見せた山下さん。「平成レトロ」という言葉が違和感を持たれる理由は大きく分けて2つある、と指摘する。
1つは「言葉の読み違い」だ。「令和になったばかりなのに、平成をレトロ扱いするとは何事か、という指摘が多い印象です。ただ、あくまで『平成の中の懐かしい部分』が平成レトロ。平成全体がレトロと言っている訳ではありません」と説明する。
2つめは「レトロ」が気に食わない、というものだ。過去の時代の「なつかしさ」を回顧する際、大正時代ならば「大正ロマン」、昭和時代ならば「昭和レトロ」という言葉が一般的に用いられてきた。この流れで行けば「平成」の後には別のカタカナが入るべき。それなのに、昭和と同じ「レトロ」でいいのか――。そんな違和感の声が多いという。
自身も「平成レトロは昭和レトロと一緒だから、正直どうなんだろうと思っていた」と話す。実は4年前の「平成レトロ」命名の際には、他の名称候補として「平成ヴィンテージ」「平成ノスタルジー」も検討していたという。
「平成(だけど)ヴィンテージ、平成(だけど)ノスタルジー、みたいに、ぱっと見アンバランスだけど、実際見たら懐かしい、と思える言葉を考えていました」
それでも、ヴィンテージは「言われた方からすればややきつい表現になる」、ノスタルジーは「モノよりも気持ちを指している印象がある」として採用せず。「馴染みのある言葉を流用して、意味を伝わりやすくするのが重要」と、最終的には昭和と同じ「レトロ」をチョイスしたという。