日本航空(JAL)傘下の中長距離格安航空(LCC)、ZIPAIR(ジップエア)が成田-ロサンゼルス線を2021年12月25日に開設した。ジップエアにとってはソウル(仁川)、バンコク(スワンナプーム)、シンガポール、ハワイ(ホノルル)に次ぐ5路線目で、LCCが太平洋を横断する路線を開設するのは初めて。西田真吾社長ら関係者がサンタクロース姿で初便を見送った。
国境を超えた往来が制限される中、290人乗れる機体に対して初便を予約したのは60人。実際に乗った人は53人だった。ただ、貨物需要に下支えされており、「飛ばせば飛ばすほど、赤字を圧縮できるという算段が立った」(西田社長)。週3往復で運航を始めたが、1月14日から冬ダイヤが終わる3月26日にかけて、週6便に増便する。
「『太平洋を渡りきるLCC』という悲願達成」
この日行われた就航記念式典で、西田氏は
「(北米路線でLCCという)選択肢をお客様に提示できるようになった」
「我々にとっては、『太平洋を渡りきるLCC』という悲願達成とともに、私どもは、新しい競争環境に身を投じることになる」
などと新路線の意義を強調した。
運賃は便によって変動するが、普通席にあたる「スタンダード」(Standard)が片道2万7500円から、ビジネスクラスにあたる「ジップフルフラット」(ZIP Full-Flat)が8万8000円から。西田氏は就航を発表した11月12日の記者会見で、「フルサービスキャリア」(FSC)と呼ばれる既存の航空会社と比べて「かなり価格競争力があると思っている」と強調した上で、特に座席が水平になる「フルフラット」のFSCビジネスクラスと比べると「4分の1ぐらいの値段で設定できている」と説明していた。
コロナ禍が収まったら「大谷選手の活躍を見に」
来賓としてあいさつした千葉県の熊谷俊人知事は、
「千葉県は半島で、千葉県の先には何もない。そういう意味で、私たちは常に、この『半島性』の克服が大きな大きな課題になってきた」
とした上で、成田空港を「宝であり、生命線」だと表現。成田空港がLCCで北米と結ばれることを「私たちにとっても大変意義深い」とした。その上で、
「新型コロナウイルスやオミクロン株がある程度収束したあかつきには、この成田-ロサンゼルス便、ジップエアで、大谷(翔平)選手の活躍を見に、多くの方が成田空港から飛び立たれることを心待ちにしている」
とエールを送った。
初便の乗客は53人。一方で、貨物は3Dプリンターやオフィス家具など約11.3トンを積み、容積ベースでは満載だった。西田氏は次のように話し、貨物収入に支えられて路線が持続可能になっているとの見方を示した。
「このコロナ禍のもとで、お客様からいただく(旅客)運賃だけで路線を維持できる路線は世界中にないと思う。そういった意味では、航空貨物の収入に下支えされて各社運航を続けているのが現状だ」
「飛ばせば飛ばすほど、赤字をちょっと圧縮できるという算段が立った」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)